出版社内容情報
夕日に染まるお父さんの部屋で見つけたのは、木箱に入った片方だけの蝶の羽。その夜、寂しそうに窓の外を見つめる蝶の夢をみた「ぼく」は、画用紙と絵の具で蝶の仲間を作ろうと思い立ち──。
現在は絶滅危惧種に指定されている、ウスイロヒョウモンモドキという蝶をモチーフにした作品。「ぼく」のやさしい思いに心があたたかくなるとともに、大切な自然について考えるお話です。
内容説明
第38回日産童話と絵本のグランプリ童話大賞受賞作品。
著者等紹介
藪口莉那[ヤブグチマリナ]
兵庫県出身。大阪大学大学院修了。日産童話と絵本のグランプリ第36回優秀賞、第37回佳作受賞。第15回「文芸思潮」エッセイ賞優秀賞、2008年もちろん奇妙にこわい話優秀作に選ばれる
横須賀香[ヨコスカカオリ]
東京都出身。東京藝術大学日本画科卒業、同大学院絵画科修了。『ちかしつのなかで』で第32回日産童話と絵本のグランプリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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やすらぎ🍀
161
木箱。大切なものを収めるためのもの。花びらのように静かに舞いおりてきたんだ。艷やかなたった一枚の羽、美しいだろう。手のひらに添えて真っ暗な夜を見つめていると、もう一度飛んでみたい、そう聴こえてきたんだ。今は貴重な蝶だから、ずっと独りで寂しさを感じていたのだろう。喜んでくれるといいな。小さな羽に暖かな光が射せば、父と描いた蝶とともに星月夜を舞い上がる。優しさは星の数よりも輝いて、連なる光の梯子が幻想の世界に導いてくれる。夢は叶うためにあるのだから、夢を忘れないんだよ。金魚のイチ子は夜を見つめ、微笑んでいる。2023/08/12
はる
66
美しい物語。耽美な絵と文章に引き込まれました。音の独特の表現も印象に残ります。少年の汚れのない優しさがいい。写実的な絵なので、ラストの幻想的な展開は驚きました。美しいけれど、何故か少し怖さを感じます。2023/05/09
けろりん
57
静謐で美しい絵本です。野生のまま、その数を減らしてゆく蝶と、人の手によって姿かたちを矯められ、環境に順応して長寿を得た金魚の対比が見事。夜の底に降り積もる静かな寂しさ。夕日に染まる空に翻るオレンジ色のリボン。ぼくとお父さんの優しく思いやりに満ちた時間。本棚の隅に置かれた小さな木箱には魔法が眠っていました。2023/05/05
ぶんこ
43
ウスイロヒョウモンモドキという滅多に見られなくなっている蝶がいます。お父さんは、その羽根を拾い木箱におさめて大事に保管していました。ある日、お父さんの部屋から聴こえた「ハタリ」という音。興味を持った僕は木箱を発見。蝶の孤独を感じ取った僕の感性がすごい。仲間の蝶をと、たくさんの紙の蝶を作ります。お父さんも協力して作った蝶と木箱の蝶が空へ飛び立っていく様が美しい。1匹残された金魚のイチ子の「ポクリ」という音。「ハタリ」と「ポクリ」、穏やかで優しい世界の静かな音にひかれました。2023/05/04
たまきら
35
美しい絵と世界にうっとり。うっとりしつつ、ちょうちょの「ともだち」を作ることも美しいけれど、彼らが友達を増やせる環境を作る方が大切だよなあ…とちょっと思っちゃいました。金魚はひとりのままだし。2024/04/05