内容説明
石油資源の確保を大義名分に、無謀なる戦いを挑み、苦難の末に獲得しながらも貴重なる石油資源を活かし得なかった、無能ともいえる戦争指導者。技術軽視の風潮の日本陸軍にあって、最高の人材を擁し、自由闊達なアカデミックな気風が横溢した燃料研究・開発機関の知られざる活動を描く話題の技術戦史。図版多数。
目次
第1章 石油は足下にあった
第2章 石油ジレンマ
第3章 陸軍燃料廠の誕生
第4章 石油を南方に求めて
第5章 技術将校の群像
第6章 青春を陸軍燃料廠に捧げて
第7章 石油国策の大転換
第8章 陸軍の燃料技術
第9章 終戦を迎えて
著者等紹介
石井正紀[イシイマサミチ]
昭和12年、東京品川に生まれる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。千代田化工建設(株)、千代田テクノエース(株)を経て、現在、石井正紀技術士事務所を主宰。在社中は、主としてプラントの建設に従事し、エクアドル、サウジアラビア、アルジェリアに長期滞在する。日本技術士会会員、環境アセスメント学会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
69
陸軍の燃料技術。海軍との比較もある。京都大学理学部小松茂教授の研究指導とのこと。東大工学部大島清、九大工学部安藤一雄、明治専門学校(現在の九州工業大学)の栗原鑑司。 終戦後の後処理についての記述もある 岩国は三井石油化学、日本鉱業 「石油技術者たちの太平洋戦争」もある。 劣悪な航空燃料、燃料不足による訓練時間の短縮など、記憶の記述は貴重だ。府中にあった。5年間。2013/06/20
ゲオルギオ・ハーン
25
太平洋戦争における石油の研究開発を技術者の視点から書いた一冊。戦後の石油産業の準備段階とも考えられるくらい欧米各国と比べて遅れており、東南アジアで占領したイギリスの石油施設から施設や現物から学び、欧米の文献を読んで研究していた日々、危険な戦地での経験や復員の苦労なども書かれている。太平洋戦争関連の本で興味深いのは軍人よりも技術者たちの方が戦力差をよく理解しており、欧米の技術と比べてとても遅れているのにどうして戦いを挑んだのかという疑問が各分野で見られる。石油も同じく生産量・質の両方で大きく劣っていた。2022/10/06
叛逆のくりぃむ
9
陸軍の石油を巡る攻防を描いている。陸軍燃料廠が多彩な人材をかかえており、それが戦後復興の苗床となった点は興味深い。2016/08/16
aeg55
2
府中にあった米軍基地の前身である「陸軍燃料廠」、昭和初期に作られたわけだが、この広大な土地は何だったか、またどうやって摂取したのかまではわからなかった。府中市同様に陸軍関係の基地や軍需工場のあった近隣市、立川や武蔵野市、東大和市などでは激しい空襲に曝されたが、府中はさほどでもなかった理由は、わかった。米軍が東府中の陸軍施設を接収し使用する為、というのは想像通りであるが、各地の陸軍燃料廠の製油所を順々に破壊したところで8/15となった、ということを知った。これが後の世(今)に禍根を残すようになったのだろう…2023/10/24
フルボッコス代官
1
陸軍の燃料行政について詳しく書かれている。燃料関係ってのは作戦や人事などの華々しいものとは違い、地味であるし、技術関係でも兵器技術などとも比較にならない地味さがある。しかし、戦略上重要なものであり、技術であることは間違いない。それに関しての組織や技術について、石油を中心にしてどのように進み・苦労したかがわかる一冊。2020/10/17