内容説明
飢餓、寒気、マラリア、赤痢、そして、連合軍の猛攻撃―東部ニューギニアの高峰サラワケットで無念の涙をのんだ日本軍兵士たちの凄惨な敗退の途を描く。絶え間なき熾烈な砲爆撃下、己れの使命を果たさんと果敢に戦いぬいた一砲兵が最悪の戦場から奇跡的に生還した自らの体験を礎に活写するノンフィクション。
目次
ラエの石
サラモア布陣
弾丸の死角
退避行
生死の境
B24来襲
一番砲手の座
二人の勇士
不思議な光景
黒い巨体〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ted
1
’00年7月(底本’95年1月)刊。○連合軍の攻勢により、ろくな食糧もなくサラモアの陣地からラエを経て標高4500mのサラワケット山を越え、キアリ、マダン、ウエワクへと敗退する1万の日本兵のうち、2500人が命を落とした。負け戦ではあったが、全くのやられっぱなしではなく、砲兵として敵の爆撃機や戦闘機を結構撃墜している。地獄の前線に比べれば、パラオやラバウルですらずっと後方で戦時の危機感が薄かったようだ。内地との温度差に至っては推して知るべし。内地への帰還を夢にまで見たであろう無数の兵士たちの無念を想う。2024/03/26