内容説明
「時代精神」よ、さようなら。「精神」によって硬直化してきた「建築」を、「言葉」によって解きほぐす。
目次
序―建築を語ること
「美」の機能
『様式』の誕生と合理主義
空間という超越
ヘーゲルと芸術の終焉
デコル論の起源と系譜
自然と日本的枠組み
エンタシス症候群
ヴェルフリンという構築
ビルディング・アーキテクチュアという切断〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よん
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あとがきに明かされているように、「建築を歴史的に認識するというのはどういうことか」という興味から出発している。藤森照信に「建築への愛がない」と批判されたエピソードを出して「研究や批評にとって愛はむしろ有害」と断じていて、たしかに愛するが故に周りが見えなくなっていることに気付いていない語り方は、どこかで誰かに馬鹿にされているんだろうな。2015/04/12
cocomero
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建築と言葉について、本来無関係の双方をさも親密であるかのようにみせかけてきた、「歴史」という近代的なシステムないしメカニズムを取り上げ、批判的に論じられる。建築をめぐる近現代の言説は、建築について、言葉によって事後的に意味を付与され続ける、それ自体は無意味なゼロ記号として規定してきた傾向にある。それは、絶えず現時点という、それ以前の出来事を俯瞰しえる有利な地点から、過去を恣意的に解釈し、そこに「時代精神」などのありそうにもない観念を随意に投射してきた、横暴な近代的な歴史認識の仕方を踏襲してしまっている。2021/08/15