内容説明
何度でも読みたい暮らしのエッセイ。“おばんざい”で知られる京の随筆家が綴った四季の暮らし。
目次
初春(寒もち;年賀状 ほか)
春(ばらずし;てまりうた ほか)
初夏(らっきょう漬け;目かくし ほか)
夏(おなすのまる煮き;扇子 ほか)
秋(栗ご飯;しば漬 ほか)
冬(かぶら蒸し;じょたん ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
81
大村しげさんは一日一日を深く味わえる方なのだろう。それも肩に力を入れず自然体で。季節の移ろいを感じ、あぁ、そろそろあれを作ろう、あれが食べたいと思う。たとえば本書を読んだ白露の候なら「きごしょうのたいたん」である。食べ物だけではない。当たり前の日々を楽しめる方といえばいいのだろうか。日常の中にあるささやかなしあわせを感じ世をはかなんだり、不平不満を並べ立てることはしない。そんな心持ちならば、毎日はおだやかに過ぎつつ、しかしその日その日が新鮮だろう。大村しげさんは人生の達人である。良い本に出会いました。2017/09/24
ユメ
42
また、素敵なエッセイに出会えた。暮しの手帖に連載されていた文章をまとめたもので、京都の昔ながらの暮らしぶりが、はんなりとした京ことばで活き活きと綴られている。大村しげさんという方の人柄が滲み出たようなエッセイだ。大村さんは、暮らしを楽しむための工夫が上手な人だ。その眼差しはいつも暮らしのひだに向けられている。折々の行事、母から教わったこと…伝統を守ることで暮らしにめりはりをつける姿に感銘を受けた。中でも「あとへは戻らん」という文章が好きだ。「あとへは戻らん」この精神こそが、大村さんの原動力なのかなと思う。2016/11/19
ぶんこ
22
京言葉で書かれていて、所々分からない言葉があると調べる度に、少し賢くなったりしてました。 懐中弁当、じょたんに興味津々。 この2点は、結局詳しくはわかりませんでした。 それにしても丁寧な暮らし方で、ぐうたら主婦には恥ずかしくなる事だらけです。きゅうりもみの作り方には、目から鱗でした。 普通に塩をもみ込んでました。季節ごとに扇子を変えるのもおしゃれですね。 真似したいと思ったことは、ドンドン取り入れよう!2014/06/23
きゅー
11
”東の幸田文、西の大村しげ”という言葉をどこかで聞いた。確かにふたりとも文章に端正な性格がしっとりとにじみ出て、書かれている対象がというよりも、その言葉遣いの中に心地よさを感じる。幸田文が東京の下町らしい、はっきりきびきびとした言葉なら、大村しげははんなりとした京ことばで文章を書く。本人は自分のことを古臭くてもっさりとしているけれど、いえいえそんなことはなく、古いものを大事にする姿 、四季折々の季節に合ったけじめある生活などは見習いたいものだ。 2012/05/13
きりぱい
10
寒もち、年賀状、ななぐさのおかいさん・・という風に四季ごとの暮らしのしつらえをよどみなく京言葉で語る随筆。今ではもう便利な物に変わっている懐かしいような古い話もあるけれど、京都ならではの食材やおばんざい、丁寧な暮らしぶりがいい。ぎゅっと絞って砂糖と熱い湯をさすだいだい湯も飲みたくなるし、十人が十人「これなんどす?」と首をかしげるじゃがいものお浸しも気になる。あと、家の表の掃き方の話など、お互いに領分を侵していらぬ気を使わせないやり方から、冷たいと言われる京都人の実際の理屈付けがわかりやすい。2013/12/07