内容説明
下落合で弔いを専門とする墓寺、青泉寺。お縁は「三味聖」としてその湯潅場に立ち、死者の無念や心残りを取り除くように、優しい手で亡骸を洗い清める。そんな三昧聖の湯灌を望む者は多く、夢中で働くうちに、お縁は二十二歳になっていた。だが、文化三年から翌年にかけて、江戸の街は大きな不幸に見舞われ、それに伴い、お縁にまつわるひとびと、そしてお縁自身の運命の歯車が狂い始める。実母お香との真の和解はあるのか、そして正念との関係に新たな展開はあるのか。お縁にとっての真の幸せとは何か。生きることの意味を問う物語、堂々の完結。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
369
再読 あぁ、正縁、正念、やはりその未来を望むか(涙) 死者を弔う湯灌の道に身を捧ぐ三昧聖、お縁の物語完結編。前作から少し成長し、自身のことも深く考えられるようになっても変わらず自分以外の誰かのために一生懸命、尊く健気に真心を尽くす。親に「子を愛しいと思う気持ちを育めなかった」と捨てられた過去 胸の奥の溶けない氷の塊 だからこそ人知れず抱く我が思い 切ない程のお縁の想い 死者を深く見つめ、生者を慈しむ、その心に本気で幸せになって欲しかった。いいんだよね、その決断で! 久しく聞いてないな、秋夜の虫の音‼️🙇2018/11/11
AKIKO-WILL
356
高田郁さんの今出ている本はアンソロジーの時代小説以外は全て読破しました。この本は、デビュー作「出世花」の続編。お艶からお縁になり、正縁となり少女から女性になっていくお縁。高田さんの作品のヒロインは一貫して女性としての幸せよりも人間としてその仕事を全うしようとする強い女性が描かれていてとても胸打たれます。自分の事よりも他人のために尽くす女性像は惹かれますね。お縁が生き菩薩だと言われるシーンも涙が出ました。早く高田さんの作品をもっとみたいです。2016/03/17
ちはや@灯れ松明の火
340
咲き初めた花も生まれ来るひともやがては土へと還る。烈しい大火や橋の崩落で刈り取られる命に打ちのめされながら、憂いを濯ぎ、悔いを拭い、安らぎを施してはその旅立ちを見送る道を生きてきた。寄る辺なきふたりが静かに寄りそう姿、一度途切れながら子に繋がれる絆、ひととして生きる道はひとつではないと知った時、ありふれた幸せは心を絡めとる泥土に変わる。けれど、生きると決めた道はひとつだけ。苦しみに塗れた泥に下ろした根、悲しみの涙を受け止めんと広げた葉、清らかに天を仰いで咲いた花。幾度も命はめぐり、ふたたび縁は紡がれる。 2016/07/27
た〜
332
みをつくしと違いさくって読める話ではなかった。より重く深い。やりようによっては長く続けることも出来たであろうが、それをせずきちんと終わらせる潔さも良い。「蓮花の契り」という題名の由来となる場面の荘厳さは比類がない2015/06/16
再び読書
296
電車で読んではいけない本でした。お縁こと正縁が、死者やその縁のある人を湯灌によって救う。ただし、最後まで自分の幸せを頑なに望まない様は、少し不自然さを感じる。正念と結ばれても、決してばちは当たらないと思うのは、ぼくだけでしょうか?母であるお香との親子の絆か取り戻せたのが、救いではあるが子を望んでも良いのではと思ってしまう。結末で物足りなさが残りました。2016/03/03