内容説明
長崎で最新の医学を学び、江戸に戻った保本登は、突然小石川養生所に呼び出され、見習い勤務を命ぜられた。エリートとしての矜持を抱く登は、「赤髯」と呼ばれる医長・新出去定の強引さに不満を抱き、激しい反発を覚える。だが、養生所を訪れる貧しい患者たちや、徒労とみえることに日々を費やす「赤髯」とふれ合ううち―。病や死を通して“生”の重みを描き出した、山本周五郎渾身の傑作。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903年、山梨県生まれ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。1926年『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇デビュー作となった。『日本婦道記』が1943年上期の直木賞に推されたが、受賞を辞退。以後、『樅の木は残った』『赤ひげ診療譚』など次々と代表作を残した。1967年2月14日没。享年63歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mk
3
若き医師、保本登の成長っぷりが素晴らしいというかうらやましい。◆印象に残った患者は、親に食い物にされないために狂人を装い、男はたいてい堕落するものだからと、ひとりで子供を産み育てようと決め実行した女性。なんというクールさ。◆吉凶は糾える縄のごとし、そして一度転落すれば這い上がるのは容易ではない。とにもかくにもセーフティネットは重要だ。2009/11/16
かずくん
2
新聞で紹介されていたので読書。電車での移動中や仕事中のちょっとした隙間時間に読んだため、読み終わるのに時間がかかった。赤ひげ診療所にやってきた保本強から見た赤ひげ診療所の話。思っていたのと違うが、この保本強が本当の医者になる、それも人の機微や環境にも理解できる医者になるまで。2024/02/03
necoko19
2
★★★ 毒親にDVに幼児虐待にもういろいろ今の時代には読むに耐えない背景が絡んでてつらくなる。去定先生が幕府についてぶつくさ言ってたけど、いつの時代も変わりませんね…。去定先生の人間出来てるようで、いろいろ葛藤して人間臭いところも、登の素直なところも、こうありたいなぁ!と思った。2021/07/07
風鈴
2
テレビドラマで凄く引き込まれ、そう言えば山本周五郎の作品読んでなかった。原作とドラマは少しアレンジされていたがとてもかさなりあって奥深い内容だった。作品は古いが決して色あせず、無知と貧困を憎む赤髭と反発していた登が彼に傾倒していく成長物語がしみじみと心に沁みた。2018/01/02
ナンさん
1
映画より原作の方が好きだなぁ。 確かに黒澤明の赤ひげは名作だとは思うけど(何度か観てるし)映画は赤ひげメインで登は脇役に徹していて全体的に物語自体が圧縮され良くも悪くも黒澤明色が強く出ているのに対して。原作はまるで連続ドラマの様に軽快なテンポで話しが進み。連続短編集の様な人間ドラマが繰り広げられるという。食わず嫌いせずにもっと若い頃に読んでおけば良かったなと。2019/02/02