内容説明
中世文化のマージンに姿を顕わすグリロス、キメラ、ガーゴイル、獣‐人間、自喰‐龍、淫蕩‐猿など、修道院や大聖堂の建築や彫刻、彩色写本といった聖なる領域を、自由奔放に侵犯するこれらのバブイン=異形たちを、中世美術の最高権威が読みほぐす。
目次
第1章 周縁部をつくりだすこと
第2章 修道院の周縁部にて
第3章 大聖堂の周縁部にて
第4章 宮廷の周縁部にて
第5章 都市の周縁部にて
第6章 周縁部の終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吟遊
12
主にゴシック期の写本を扱い、その欄外に描かれた図像を読み解いていく。芸人やスカトロジーや怪物といった滑稽でばかばかしい図の数々は、中世庶民の生活を映し出し、さらに無名の図像画家たちの「自己」を映してもいる。そうした周縁部は活き活きとして肯定的な遊びに満ちているが、ルネサンス期には本文に従属させられてしまう。2017/12/09
あかふく
1
中世の写本にはページの内、テクストの外の場に様々な図像があふれている。これら「どっちつかず」の存在は中心に対する周縁として、中心を揺さぶるものであった(ただし根底から覆すようなものではない)。それらの怪物たちは写本だけでなく建築、とくに修道院や大聖堂の周縁部、つまり玄関などに現れる。これらの周縁部に作られるものたちは社会的に下位の人びとを示しもしていた。それを作る画家や彫刻家をも含んで。その自己言及性ゆえ、対象としてテクストを犯さないために自律性が認められる(もちろん関係は結ぶものの)。2014/01/16
つだしょ
0
1)「周縁」というと小難しいが、中心的なものがあってその周りにあるもののこと。時禱書などの中世写本美術にみることができる、文字の周りにある挿絵などを積極的に再評価し直す試みである。 周知のようにこれまでの美術史では中世美術はルネサンス美術以降のかげになって、ほとんど考古学的な興味の対象ぐらいの意識しかなかった。あるいは、フロイトのバイアスによって恣意的に、いいように利用されるぐらいでしかなかった。しかし、本書において画期的なのは脱/アンチ・フロイト[p44、p140]であることはもちろん、2013/05/01