内容説明
孤独な少女マギーと特別なドラゴン、グリシャ。深夜のザッハーホテルで出会った二人は、世界の垣根を越えて友情を育むが、古都ウィーンにはいまわしい過去が封印されていて…。1人と1頭の美しくも切ない友情の物語。
著者等紹介
ワイヤー,ガレット[ワイヤー,ガレット] [Weyr,Garret]
1965年、ニューヨーク生まれ。ノースニューヨーク大学大学院で映画専攻の修士号を取得。主な作品に、全米で絶賛され、マイケル・L・プリンツ賞オーナーに選定されたYA小説『マイ・ハートビート』(河出書房新社)など
ハーネット,ケイティー[ハーネット,ケイティー] [Harnett,Katie]
ケンブリッジ・アートカレッジ卒業後、イラストレーター、絵本作家として活躍。2015年、ボローニャ・ブックフェアのARS IN FABULA Grant賞受賞。2017年には、ケイト・グリーナウェイ賞にノミネートされている
三辺律子[サンベリツコ]
英米文学翻訳家。海外文学を紹介する小冊子BOOKMARKの編集もつとめている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
383
タイトルや表紙からはドラゴンの物語であるかのようだが、実は少女マギーの成長物語である。そうはいっても、もちろんグリシャという名のドラゴンがプロットの牽引者であるとともに、マギーにとってのかけがえのない親友であり、同時に影成る導き手でもある。そして、そのグリシャは戦いの勲しが去った後の遅れてきたドラゴンであり、最後のドラゴンでもあった。したがって、マギーが魔法と引き換えに失ったものを私たちもまた永遠に失くしてしまったたのである。その意味では、これは喪失の物語でもあった。2022/02/16
ムーミン2号
12
孤独な少女と孤独なドラゴンが友情をはぐくみ、そして魔法によって眠らされているウィーンに集められたドラゴンたちを目覚めさせる、勇気に満ちた冒険の物語。ファンタジーを装いながら、しかし本書は今の世の中で、あるいは今の人々の生き方で、それでいいのか? と問うているようにも感じる。日本に昔はいたとされる「座敷童」を今や見える人は皆無だろうし、信じている(ワタシのような)オメデタイ人も極々少数だろう。人間は、何か大切なものを過去に置き去りにしてるんじゃないか? と考えさせられる物語。2023/06/05
Miho
11
読みごたえがありました。Black Lives Matterにも通じるし、新しいおとぎ話の提示とも言えるし、記憶にまつわる哲学とも取れるし、ドラゴンおんグリシャと主人公マギーの友情物語でもあります。そもそも、グリシャとマギーは150歳くらい歳が離れているうえ、時間の流れ方が違うし、異種族どうしです。友達になりたくて、コミュニケーションをとろうするけど、うまくいくか心配し合っています。それでも相手のはなしをじっくり聞いて、話が終わるまで、じっとじっと待つのです。失われつつある大切な事を教えてくれる本でした。2020/08/02
頼ちゃん
10
何かのためには、何かを犠牲にしなくてはならない。記憶をなくすことはとても切なく、悲しい。成長するということ、大人になるということはそういうことなんだろうか。2020/01/03
BECHA☆
9
特別なドラゴンとして生まれてきたはずのグリシャは、フランツ・ヨーゼフ皇帝の史上最強の魔法使いレオポルドの術によってティーポットにされてしまった。長い年月を経て骨董屋の窓辺に飾られたグリシャを買ったのは、魔術師になりたかったヤーコブだった。そして第二次世界大戦が終わり、ヤーコブの叔父が出張先のウィーンでドラゴンたちの消息を掴む。無くなってしまった<黒い森>。信じないものには見えない。魔法のお話だけれど、今の風潮にも似ている。周りと考え方や感じ方が少し違っている魂が出会うべくして出会って世界が動き出す連鎖。2019/10/06