出版社内容情報
DV・虐待はなぜ繰り返されるのか。社会的通説に隠れ虐待を重ねるDV加害者の心理を暴き、その行動・手口を読み解く。被害者にならないため、またDV加害者から逃れるためにはどうすべきか、具体策を提供する画期的な書。
日本の読者の皆さんへ
謝辞
用語について
はじめに
第 I 部 加害者の考え方
第1章 虐待の謎(ミステリー)
第2章 DV神話──まちがった俗説
第3章 DV加害者の考え方
第4章 DV加害者のタイプ
第II部 親密な関係でのDV加害者
第5章 虐待はどのように始まるのか
第6章 日常生活でのDV加害者
第7章 DV加害者とセックス
第8章 DV加害者と依存症
第9章 DV加害者と別離
第III部 社会とDV加害者
第10章 DV加害者はどんな親か
第11章 DV加害者とその味方
第12章 DV加害者と法制度
第IV部 DV加害者を変える
第13章 DV加害者はどのように作られるのか
第14章 変化へのプロセス
第15章 虐待のない世界を創る
監訳者あとがき
資料 DVに関しての相談機関と保護命令について
はじめに(一部抜粋)
(…前略…)
本書の使い方
怒りで相手をコントロールしようとする男性と一緒に暮らす女性が必ず経験することの一つに、男性から「何をどう考えるべきか」を執拗に諭され、さらには諭されることで女性が自分の考えや信念をもちにくくしてしまうことがあります。そうした経験をした女性が本書を読んで、不健全な関係を二度と繰り返さないようになることを私は望みます。これから本書を読み進んでいく上で常に心に留めていただきたいのは、私の説明を受け入れると同時に、自分自身でしっかりと考えるということです。私がDV加害者について述べたことのうち一つでもあなた自身の経験と合致しないことがあれば、その部分は外して、合致すると思う部分のみを集中的に読むとよいでしょう。時には本書を閉じて自問してみてください──これは私たちの関係にどうあてはまるのだろうか。相手をコントロールしたり残忍なことをする男性に彼が該当するのなら、彼は何を考え、行動するのだろうか。もし、あなたの経験に関係しない部分があれば──例えば、子どもがいない、相手から身体的な攻撃を受けた経験がない、など──そこは飛ばし、参考になりそうなほかの項目に読み進んでください。
一人でこの本を読むと、自分の中で重圧となっていた知覚や体感が再びよみがえってきそうで耐えられないという女性がいるかもしれません。そんなときは信頼できる友人や家族たちと一緒にいることをお勧めします。本書を読んでいくと自分自身の立場がより一層明確になるかと思いますが、痛みを伴う苦悩の感覚を再び呼び起こすことになるかもしれません。
(…中略…)
DV加害者によるコントロールや見下しが日常的なものなら、間違いなくあなたは、一日の大半を相手のことばかり考えているはずです。どうやって彼を喜ばせようか、どうしたら彼は浮気をしないでいてくれるのか、どうすれば彼を変えられるのか等々。その結果、あなたは自分自身のことを考える時間がほとんどなく、あるとしても、「彼は私の何が気に障るのか」くらいでしょう。私が本書を執筆した最大の理由の一つは、読者の想定とは逆かもしれませんが、実はあなたにできるだけ彼のことを「考えない」ように仕向けることです。できるだけ多くの質問に答え、さらには彼の虐待行為がもたらした数々の混乱を一掃することで、あなたが──あなたが母親であれば子どもたちも──相手の仕掛けた心の罠から解き放たれ、本来のあなた自身の人生へ戻るために本書を使っていただきたいのです。怒りで相手を支配したがる男性は、いわば掃除機のようなもので、女性の心も日々の生活もすべて吸い取ってしまうのです。しかし、そこから再び自分の生活を取り戻す道はあります。最初の一歩は、DV加害者が何をしているのかを冷静に見極め、なぜ彼がそうするのか考えることです。本書を読んでいただければ具体的に説明しています。加害者の考え方を深く分析できるようになったら──本書を読めばできるようになります──次のあなたの行動は、一刻も早く水面に浮上して、できるだけ長く水の外へ出ていくことです。これは、必ずしも「彼と別れなさい」といっているのではありません。それは、あなたにしか決められない、非常に込み入った個人的な問題だからです。彼のところにとどまるか、それとも別れるか、いずれの選択をしたにせよ、「彼にこれ以上、私の人生のレンズを歪めさせてはならない、私の心の真ん中に土足で入りこんでくるようなことはさせない」と強く決意するあなたになれるのです。どうか自分の人生を取り戻してください。大切なあなた自身の人生なのですから。
目次
第1部 加害者の考え方(虐待の謎;DV神話―まちがった俗説;DV加害者の考え方;DV加害者のタイプ)
第2部 親密な関係でのDV加害者(虐待はどのように始まるのか;日常生活でのDV加害者;DV加害者とセックス;DV加害者と依存症;DV加害者と別離)
第3部 社会とDV加害者(DV加害者はどんな親か;DV加害者とその味方;DV加害者と法制度)
第4部 DV加害者を変える(DV加害者はどのように作られるのか;変化へのプロセス;虐待のない世界を創る)
著者等紹介
バンクロフト,ランディ[バンクロフト,ランディ][Bancroft,Lundy]
DV加害者専門カウンセラー、臨床スーパーバイザー、監護権評定者、子ども虐待調査官などを歴任。米国マサチューセッツ州にて1000人を超える加害者のケースに関わる。他にもDVがある家庭に育った10代男子のためのグループ活動を行なったり、女性の人権問題などでも精力的に活動
高橋睦子[タカハシムツコ]
吉備国際大学大学院教授(福祉政策論)・(通信制)大学院国際協力研究科長。外務省職員、島根県立大学教授などを経て現職。元ニューヨーク州最高裁判所判事長マージョリー・D・フィールズ氏の島根県での講演会(2002年)で通訳を務めたことをきっかけにDV問題への関心を深め、2006~2008年には国際交流基金日米センターの知的交流助成「ドメスティック・バイオレンス克服に向けての『共感』の促進―市民社会における安全な生活の希求」プロジェクトを実施
中島幸子[ナカジマサチコ]
NPO法人レジリエンス代表。DVコンサルタント、ソーシャルワーカー。DVの被害にあった経験がきっかけとなり勉強を始め、1991年に米国にて法学博士号取得。2001年ごろからDVについての講演活動を開始。2003年にソーシャルワーク修士号取得。同年、東京で「レジリエンス」を結成。東京と横浜で女性のための「こころのケア講座」を毎月行いながら、全国各地で毎年多数の講演を行う。杏林大学非常勤講師、茨城県立医療大学非常勤講師
山口のり子[ヤマグチノリコ]
アウェア代表。男女平等の社会づくりに30年間取り組む。シンガポールではDVやセクシャル・ハラスメント被害者支援および裁判支援をし、ロサンゼルスでは大学院で臨床心理学を学び、DV加害者プログラムのファシリテーター向けトレーニングを受ける。帰国後2002年に「アウェア」を開設して、DV加害者プログラムを、2003年にはデートDV防止教育を始める。本の執筆や講演活動とともに、デートDV防止プログラム・ファシリテーターの養成をしている。CABIP(米国カリフォルニア州DV加害者プログラム協議会)運営委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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