出版社内容情報
池袋モンパルナス──大正から昭和初期にかけて自由と新進と創造の雰囲気に満ち溢れた地が池袋に存在した。パリのモンパルナスにも勝るとも劣らない熱気と興奮に包まれたこの街に暮らし、創作に人生を懸けた29人の童画作家の作品を振り返る。
未来へと受け継がれるもの(高野之夫)
日本の〈童画〉の歩み(上笙一郎)
池袋モンパルナスと〈童画〉(尾崎(大が立)眞人)
小熊童話の生態系(アーサー・ビナード)
作家と作品 〈池袋モンパルナス〉の童画家たち
1 童画前史[明治末・大正初期]
竹久夢二/岡 落葉/渡辺与平/渡辺文子/蕗谷虹児
2 童画・第1世代[大正中期・後期]
本田庄太郎/川上四郎/武井武雄/清水良雄/初山 滋/岡本帰一/河目悌二/村山知義/深沢省三/深沢紅子
3 童画・第2世代
黒崎義介/安井小弥太/鈴木寿雄/松山文雄/前島とも/林 義雄/茂田井武/安 泰/川島はるよ/柳瀬正夢(夏川八朗)/丸木 俊/井口文秀/滝平二郎/小熊秀雄(旭太郎)
池袋モンパルナス〈童画篇〉マップ
作家略歴
未来へと受け継がれるもの(豊島区長 高野之夫)
デモクラシーの自由な空気のなか、大正から昭和にかけての代表的な児童雑誌である「赤い鳥」や絵雑誌「子供之友」がこの豊島区において創刊され、児童文化の黄金時代を画したという事実は、私たちが誇るべき固有の歴史的財産であろうと思います。
さらに、これらの雑誌を舞台として活躍した童画作家や挿絵作家の多くが池袋の地に住み、おそらくは、長崎アトリエ村の住人である芸術家たちと交流を重ね、時には軌跡を一にしながら「池袋モンパルナス」という固有の文化圏を築き、わが国の近代美術史にひときわ鮮やかな光芒を放ったと考えることは、私たちに大いなる夢と未来に対する自信を与えてくれます。
そうした文化の水脈は今につながり、それを支える人々の力によって、この地にしっかりと根を張り、多様で特色ある果実となって未来へと受け継がれていくのです。
「創造的都市(Creative City)」という概念の提唱者であるイギリスの都市計画家チャールズ・ランドリーは、「創造性は、新しいものの継続的な発明ではなく、いかにふさわしく過去を扱うかである」と指摘するとともに、「都市は一つの決定的に重要な資源を持っている──それは、そこに住む人々である」と言っています。
「池袋モンパルナスの会」の皆さんの取り組みは、まさにそうした視点から、池袋モンパルナスの歴史と文化的意義を地域の共有財産とし、未来に向けて創造的に継承しようとする区民活動であり、その活動そのものがこの街に豊かな表情をもたらす貴重な文化資源であると言っても過言ではないでしょう。
豊島区のめざす「文化創造都市」は、こうした皆さんの自主的で創造性に富んだ活動の成果を道標としながら、着実に実現されていくのだと信じます。
目次
1 童画前史―明治末・大正初期(竹久夢二;岡落葉;渡辺与平 ほか)
2 童画・第1世代―大正中期・後期(本田庄太郎;川上四郎;武井武雄 ほか)
3 童画・第2世代(黒崎義介;安井小弥太;鈴木寿雄 ほか)
著者等紹介
上笙一郎[カミショウイチロウ]
1933年、埼玉県飯能市に生まれ、文化学院を卒業、20歳の夏より文筆によって生活。児童文学研究より、児童文化の研究、児童史の研究へと領域を広げる。日本児童文学者協会・日本子ども社会学会・日本人形玩具学会の理事を務める
尾崎眞人[オザキマサト]
1952年栃木生まれ。早稲田大学大学院修士修了。板橋区立美術館学芸員を経て、京都市美術館学芸課長。「日本の前衛美術」を研究。1992~93年ハイデルベルク大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。