希望をつむぐ学力

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  • サイズ A5判/ページ数 285p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784750321684
  • NDC分類 370.8
  • Cコード C0337

出版社内容情報

今、学力論争は新たな段階を迎えている。学力テストの結果に一喜一憂せず、これからの世界を生きる子どもたちが身につけるべき学力とは何かを問い、学力格差を最重要課題としてとらえ、教育のあり方を社会の展望と結びつけて検討していくことが求められている。


はじめに●田中孝彦
第1章 学力論議の枠組みを変える
 学習の主体は子どもたち自身である――「普通」の子どもの生活意識と学習への要求●田中孝彦
 
第2章 学力低下論争はいかに現象したか
 語っているのはだれか、語られていないことは何か――学力低下論争とマスコミ・ジャーナリズム●斎藤貴男
 学力テストにかく乱される学校現場と教師の努力――希望をうばわれる子どもたち●大谷猛夫
 
第3章 学力調査を読み解く
 学力調査に見る日本の子どもたちの学力実態――最近のPISA・TIMSS・文部科学省の調査結果から●田中耕治
 学力問題の社会的性格――子ども・若者たちは学校知識のレリバンス回復を求めている●久冨善之
 
第4章 人生を生きる学力
 人生を味わう力をはぐくむ●福島 智
 子ども・親の願いを学力にむすぶ――仲間のなかで学びの世界を広げる子どもたち・学びを支える親のつながり●渡辺恵津子
 どんな子どもにもある学ぶ意欲に応え学習の権利を保障する――特別支援教育と障害のある子どもの学力問題●茂木俊彦
 
第5章 学力論の新しいステージへ
 教育における「力」の脱構築――〈自己実現〉か

はじめに
学力論議の枠組みを変えるための試み
 中山成彬文部科学大臣は、さまざまな場所で、次のような発言をくり返している。子どもたちのあいだに「競争意識」を涵養し、「世界のトップレベル」の「学力」水準を確保する。そのために「ゆとりの教育」「総合的な学習の時間」「学習指導要領」を見直す。日本社会を、各地域・各学校が「学力向上」を軸とした「人材育成」を競い合う状態にする――彼は、国家主導で「競争」を「活性化」することによって、「学力向上」「教育改革」を実現できると考えているようである。
 このような問題の認識と対処の枠組みは、20世紀の末から21世紀のはじめにかけてのこの十余年の日本において――それは「新自由主義」的な諸施策が本格的に展開されてきた時代であったが――、社会の表面に浮上してきた「学力低下」論・「教育改革」論の共通項をくくったものである。こうした枠組みは、すでに広く教育行政担当者に浸透しており、それに基づく「改革」は、学校教育の「形式化」「空洞化」をもたらし、子どもや親や教職員たちに大きな影響を及ぼしながら実際に進行してきている。
 今の日本の子ども・若者たちは、そうした社会と学校のなかで生きの見直しの必要性」という表面的な論調に流れ、そうした枠組みを強化するはたらきをしてきた。
 しかし、今回のOECDとIEAの学力調査の目的・性格には大きな違いがある。また、長年議論されてきたように、従来のIEA調査の結果に見られた日本の子どもたちの「高学力」には、大きな質的問題が含まれていた。そもそも、この二つの学力調査の結果を一括して、そこから、日本の子どもたちの「学力低下」を断定し、「学力向上」対策を導こうとする論理には、かなり無理があるのである。
 そこで、本書では、この二つの国際学力調査の性格の違いを考えてみること、二つの調査結果に表れた日本の子どもたちの「学力」の状態を分析してみること、現代世界において「学力調査」がこれほど関心をもたれるようになった理由とその問題性を考えてみることなどを含んで、この二つの調査に代表される今日の「学力調査」を読み解いてみようとしている。
2 子ども・若者の生き方への問いと学習への要求を受けとめる
 現代の日本の社会には、子ども・若者たちの生存・成長・学習を支えて生きて働いている、父母・住民、発達援助の専門家たち、教職員たちがいる。それらの人々の臨床的ともいうべある。しかし、彼らは、学校生活とそこでの学習に対して、手応えを感じられるものを求めていることは明らかである。
 そして、日本の教師たちのあいだには、今日の子ども・若者たちとともに歩みながら、彼らの「不安」や「恐れ」を受けとめ、彼らの生き方への問いと学習への要求を発展させる教育実践・学習指導を模索し続けてきた教師たちがいる。そして、そうした模索のなかから、一人ひとりの子どもの生活史・生育史を深く理解し、子どもが必要とする人間関係を支え、子どもの生き方を支える学習指導を展開する、新しい教育者像も芽生え始めている。
 今日の「学力低下」論・「教育改革」論は、日本の教師を全体的に「指導力低下」と決めつけがちである。これに対して、本書では、教師たちの世界の動向により注意深い関心を向けながら、「学力」論議の枠組みを考え直してみようとしている。「学力」論議は、学習指導の当事者である教師たちの模索に関心を向け、教師たちが正当な位置を占めて参加するものに変わらなければならないはずだからである。
4 「学力」を問い直すおとなたちの動きへの着目
 今日の日本の親・おとなたちは、「競争」「自己責任」を強調する「新自由主義」の、父母・住民による子育て観・学力観の問い直しをめぐる論議を、現実に広げ深めていく課題として考えようとしている。
5 「学力格差」への向き合い方を考える
 現代の日本社会では、「学力格差」の問題といってもよいが、「階層化」の進行を背景にして、学校の学習に簡単には立ち向かえない状態におかれている子どもたちの存在が、新しく社会問題化してきている。そして、こうした一群の子どもたちの出現は、「強い力で秩序を要求する」「きびしい競争的環境におく」「基礎学力を刻み込む」といった主張の理由にもされている。
 しかし、こうした子どもたちは、生育の過程で何重にも心身に「傷」を負わされてきた場合が多く、単純な「きびしさ」「競争」「刻み込み」という対応だけでは、彼らの生存・成長と学習を支えきれないことがほとんどである。彼らには、「傷」「不安」「恐れ」を受けとめてくれるおとなや安心してつきあえる友だちと出会える学校が必要であり、彼らの問いをたいせつにし、そこから出発する学習を経験させてくれる教師たちが必要である。
 本書では、「学力」の「格差化」の現実を見据え、その問題に正面から向き合う教育と教師のあり方を考えようとしている。指導の模索とを軸とする、教育改革の動きが一つの潮流となろうとしている。
 本書の基底を流れているのは、特定の動きの安易なモデル化に陥らないように自戒しながら、今日の日本の「学力」論議・「教育改革」論議の枠組みを問い直し組み換えるために、こうした世界の教育改革の動きに目を向けようとする関心であるといってよい。
7 希望をつむぐ学力へ
 以上、本書が立っている状況判断や、試みようとしていることのいくつかを、私なりに記してみた。これを、読者の方々が、今の「学力」論議の枠組みを組み換え、日本の子どもたちの希望を支える「学力」のための論議を広げ深める、一つの材料にしていただければ幸いである。

2005年8月
田中 孝彦

内容説明

1998年の学習指導要領改訂をきっかけに高まった学力論争は、2004年12月に公表された国際学力調査の結果を受け、新たな段階を迎えています。今、私たちは、学力テストに表れる「学力低下」や学力競争の結果に一喜一憂して、教育のゆくえを見誤ることを厳に戒めなければなりません。真に問われているのは、これからの世界に生きる子ども・若者たちが身につけるべき学力とはどのようなものか―学力ということばそのものから問い直すこと。そして、明らかになった「学力格差」を現在の教育における最も重要な課題としてとらえ、学校や教育のあり方をどのような社会をつくっていくのかという展望にむすびつけて検討し、政策化していくことではないでしょうか。これまでの議論の枠組みを変え、学力論議を新しいステージへ。未来の社会への希望と一人ひとりのしあわせをつなぐ学力論への試みをお届けします。

目次

第1章 学力論議の枠組みを変える(学習の主体は子どもたち自身である―「普通」の子どもの生活意識と学習への要求)
第2章 学力低下論争はいかに現象したか(語っているのはだれか、語られていないことは何か―学力低下論争とマスコミ・ジャーナリズム;学力テストにかく乱される学校現場と教師の努力―希望をうばわれる子どもたち)
第3章 学力調査を読み解く(学力調査に見る日本の子どもたちの学力実態―最近のPISA・TIMSS・文部科学省の調査結果から;学力問題の社会的性格―子ども・若者たちは学校知識のレリバンス回復を求めている)
第4章 人生を生きる学力(人生を味わう力をはぐくむ;子ども・親の願いを学力にむすぶ―仲間のなかで学びの世界を広げる子どもたち・学びを支える親のつながり;どんな子どもにもある学ぶ意欲に応え学習の権利を保障する―特別支援教育と障害のある子どもの学力問題)
第5章 学力論の新しいステージへ(教育における「力」の脱構築―「自己実現」から「応答可能性」へ;「弱さ」の哲学から語る学力―「強さ」の学力から「弱さ」のリテラシーへ)

著者等紹介

久冨善之[クドミヨシユキ]
戦後すぐの1946年生まれ。泉下の両親は教師だった。専門は教育社会学で、一橋大学大学院社会学研究科に勤務。このところ教師に独特の教師気質の成立・はたらき・変化を追いかけ中(『教員文化の日本的特質』多賀出版、2003年)。学校文化・生徒文化についても仲間たちと調査を継続中

田中孝彦[タナカタカヒコ]
1945年生まれ。都留文科大学教授。教育思想・臨床教育学。山梨県都留の地域で、子どもたちとの対話・相談を重ねながら、臨床教育学という新しい学問の開拓を試みている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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umico

0
今、PISA型学力について、めっちゃ語れる。2012/04/16

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