出版社内容情報
OECDの国際学力調査で好成績をおさめたフィンランドの教育の今と歴史を知る決定版。カギは、教育の機会と結果の平等の保障をを貫く教育思想とシステム。ルポ・エッセイ・研究論文といった多彩な寄稿で格差をつくらない社会を活写。フィンランドの教育の全体像がわかる初めての本。
はじめに●中嶋 博
第1章 フィンランドの子どもと教育の今
PISA好成績を支えるシステムと進む教育改革――現場裁量と“希望”のゆくえ●渡邊あや
社会福祉に包まれて心地よい子育て――私とフィンランドの共同育児●藤井ニエメラみどり
見えてきた“学力世界1”の素顔――フィンランドの学校と教育・取材ノート●西島 徹
相手に勝るためではなく異国に見習うこととは――フィンランドから見た日本●ペトリ・ニエメラ
第2章 学習社会を支える教育システム
夢をもち続けられる国――専門大学AMK留学の3年半●中田綾子
専門大学AMKの挑戦――進学率を押し上げる職業志向・地域密着型高等教育機関●渡邊あや
教師教育の改革と教師像――2003年の調査と研究交流から●田中孝彦
福祉と経済を両立させる知業時代の教育システム――幼児期から自己効力感を育てる内的起業家精神教育●川崎一彦
第3章 格差を生まない社会――多様性の尊重と福祉・発達保障
多文化社会の言語的人権を保障する学校教育――先住民族サーミの人々と母語教育・文化継承●山川亜古
コラボレーションの発達援助学――高い学力は「安心と共同」の学
はじめに
北欧の一角を占める、平和な森と湖の国として知られるフィンランドは、近時「IT先進国」として、また各種国際競争力報告でトップ・レベルに位置され、注目を浴びてきた。
折しも、経済協力開発機構(OECD)の2000年と2003年の国際学力調査(PISA)で高い学力水準を示した。
特に2003年の調査では、読解力と科学的リテラシーで1位、数学的リテラシーで2位、問題解決能力で同列3位、総合的に「学力世界1」となり、「教育大国」と呼ばれるに至り、同国への事情視察をする者があとを絶たない昨今である。
しかしこれには、長いあいだの関係者の並々ならぬ努力があり、それを支える社会的・文化的背景があって可能なものであったことを理解する必要があろう。教育の場合に限ってみても、社会的背景を問わず、すべての国民に平等な教育の機会を保障するための総合制基礎学校制度は、1968年にその法案が国会を通過し、1970年代初頭に全土に設立されたが、その後も総合制教育の原則を堅持してきている。
そして、授業、教材、給食、通学、医療など、学校教育にかかるすべての費用は無償。そのうえ、教師のレベルが高く、他国にその例を見祉その他の広い分野で、かねてから研究を進めてこられた方、また、いわゆる新進気鋭の研究者、新聞記者によるルポ、さらに現地からのレポートをしてくださった方と、各種の角度から検討がなされたものである。そのそれぞれがわが国の教育と社会の現状打破の指針となることをかたく信じて疑わない。(後略)
目次
第1章 フィンランドの子どもと教育の今(PISA好成績を支えるシステムと進む教育改革―現場裁量と“希望”のゆくえ;社会福祉に包まれて心地よい子育て―私とフィンランドの共同育児;見えてきた“学力世界1”の素顔―フィンランドの学校と教育・取材ノート;相手に勝るためではなく異国に見習うこととは―フィンランドから見た日本)
第2章 学習社会を支える教育システム(夢をもち続けられる国―専門大学AMK留学の3年半;専門大学AMKの挑戦―進学率を押し上げる職業志向・地域密着型高等教育機関;教師教育の改革と教師像―2003年の調査と研究交流から;福祉と経済を両立させる知業時代の教育システム―幼児期から自己効力感を育てる内的起業家精神教育)
第3章 格差を生まない社会―多様性の尊重と福祉・発達保障(多文化社会の言語的人権を保障する学校教育―先住民族サーミの人々と母語教育・文化継承;コラボレーションの発達援助学―高い学力は「安心と共同」の学びから;すべての子どもに基礎教育を保障―特別なサポートを必要とする子どもの教育;家族関係の流動化と福祉国家―家族・ジェンダー政策と社会保障・社会福祉・子どもの人権保障)
第4章 フィンランドの教育の歴史と背景(差別・選別を廃し総合制学校を、そして未来へ―民衆の手でつくる学習社会)
著者等紹介
庄井良信[ショウイヨシノブ]
1960年生まれ。北海道教育大学大学院助教授。専門分野は臨床教育学
中嶋博[ナカジマヒロシ]
1923年生まれ。(財)教科書研究センターで特別研究員として、北欧教科書の分析を連日行っている。1984年にフィンランド科学アカデミー外国会員に推され、現在早稲田大学名誉教授。比較・国際教育学専攻
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