9・11以後の監視―“監視社会”と“自由”

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 267p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750319797
  • NDC分類 316.1
  • Cコード C0030

出版社内容情報

「隠すものがなければ恐れることは何もないとよく言われるが、その考えが誤っているのは、9.11以後いよいよ決定的になった」――2001年9月11日の米同時多発テロ以降、“テロとの戦い”“セキュリティ確保”という名目の下に、世界規模で、デジタル情報技術も駆使した市民監視の強化が図られている。生体識別情報を記録したICチップ付きの新型旅券、全世界を覆う通信傍受網、街頭監視カメラ、全国民の基本情報をコンピュータで一元管理する巨大データベース、国内版パスポート。こうした国民監視の基盤的制度を形作るものの出現は、しかしその一方で広域犯罪捜査の一助となっている側面も否めない。こうした「配慮(ケア)」と「統制」という両義性をもつ「監視」は9.11以後、世界的にどのように広がり、具体的な措置として何がとられているのか。その思想的・歴史的な位置づけと変遷、テクノロジー・工学的進展との関連、人間の尊厳や市民的自由との兼ね合いなどを検討する、監視社会論の世界的権威による最新刊の待望の邦訳。

序章
監視と急激な変化 本書について

第1章 監視を理解する
真意の探索/破壊と露呈/9・11以前の監視/監視の眼差しを理論化する/批判的問い/プリズム、展望、実践

第2章 監視の強化
目に見える犠牲者、消え去る自由/「テロリスト」の捕獲:疑いの文化/テロリストとは誰か/萎縮的風潮:秘密主義の文化/監視に動員される市民/監視を強化する

第3章 監視の自動化
監視を売る/監視技術/バイオメトリクス/IDカード/CCTVと顔認識/9・11以後の技術監視/結果と批判

第4章 監視の統合
全情報認知(TIA)/収斂、コード、カテゴリー/新しい統治/テロリズムと監視

第5章 監視のグローバル化
グローバル化、テロリズム、監視/グローバル化した監視/旅客機搭乗者データ/ハイジャックの歴史/ダンスのような進歩/グローバルな統合に向けて?/反監視のグローバル化/グローバルな監視?

第6章 監視への抵抗
糸を寄せ集める/難題に立ち向かう/社会的問い/新しい政治への取り組み/テクノロジーの市民権/疑念と秘密を超えて

エピローグ 日本の読者へ 9・11前後の日本の監視
テロ

"監修者あとがき
 本書は、David Lyon, Surveillance after September 11 (Blackwell Publishing Ltd., 2003)を全訳したものである。なお、この日本語版刊行に際しては、原著にはなかった「エピローグ 日本の読者へ」を新たに書き加えて頂いた。
 著者デイビッド・ライアン氏は、カナダ・クイーンズ大学の社会学の教授であり、監視社会研究などをテーマにした著作・論文が多数あり、代表作の一つであるSurveillance Society: Monitoring Everyday Life (Open University Press, 2001)も既に訳出されている(『監視社会』河村一郎訳、青土社、2001年)。邦訳書として、他に『ポストモダニティ』(合庭淳訳、せりか書房、1996年。原書は、Postmodernity, Open University Press, 1994)、『新情報化社会論――いま何が問われているか』(小松崎清介監訳、コンピュータ・エージ社、1990年。原書は、The Information Society: Issues & Illusions, Polity Press, 1988)もある。
 監視社会研究の第一人者であるライアン教授は、これまでも9・11との関連で監視の諸局面を検討した論考を精力的に発表してきた。たとえば、邦訳が出ているものに限っても、「九・一一以降の監視」清ン教授が活写した監視社会の新たな次元での展開は欧米をはじめとする世界的動向であるが、この日本も例外ではない。「エピローグ 日本の読者へ」でも批判的に触れられているが、私たちの国もいまこの「監視社会」に向かってまっしぐらに走っている(詳しくは、私も編者を務める『住基ネットと監視社会』日本評論社、2003年を参照されたい)。その象徴が、国民一人一人に番号(住民票コード)を振り、氏名、住所、性別、生年月日などの基本情報をコンピュータ・ネットワークで全国的、一元的に管理、運用する住基ネットの稼働(2002年)で、翌03年8月からは希望者にICチップ内蔵の住基カードの交付も含め、全面稼働した。
 これは、1億数千万の国民全ての基本情報がコンピュータで繋がれ、巨大なデータベースが構築されたことを意味し、もしこれが漏れたり、不正使用されれば、その被害の規模と程度は想像を絶する。また、住民票コードをいわばマスターキーとして、さまざまな個人情報が照合・結合され、私たちの生活が丸裸にされ、住基カードが身分証明書として汎用性・普遍性を高め、将来「国内版パスポート」として携行が義務付けられる事態も十分想定できる。
 さらに、主要、この国の状況を特に9・11以後の国際的文脈に位置付け、この国も含む現代世界の監視化の特徴的動向(強化、自動化、統合化、グローバル化)やその歴史的背景を理解する上で極めて有益な視点や素材を豊富に提供しているように思われる。
 9・11以後の監視の強化と全面化、国内における国家的・中央集権的監視の傾向、グローバルな監視の連携、これらを含む反テロリズム立法による市民的自由の抑圧などへの鋭い警告だけでなく、「監視」を一面的に捉えることを戒め、「配慮」と「管理・統制」の両義性を備えるものであることを繰り返し強調していること、監視を社会的広がりと歴史的文脈に位置付け、「監視国家」論としてだけではなく「監視社会」論として社会的、歴史的に論じていること、これとも関わって、9・11を孤立的、断絶的に把握せず、「監視の連続性」を踏まえつつその歴史的意義(強化、全面化など)を押さえようと試みていることなど、ライアン教授の洞察は奥行きが深く、示唆に富んでいる。
 技術偏重、疑惑と秘密にますます傾斜する現代の「監視」をどう克服していくか、第6章で示された議論は必ずしもそのオルタナティブの具体的な方向を提示しているわけではないが、"

内容説明

監視カメラ、ICカード、生体認証、インターネット利用監視―ITを駆使したハイテク市民監視で保障される「安全」「安心」とは何か。日本語版特別書き下ろしエピローグ付き。

目次

第1章 監視を理解する
第2章 監視の強化
第3章 監視の自動化
第4章 監視の統合
第5章 監視のグローバル化
第6章 監視への抵抗
エピローグ日本の読者へ 9・11前後の日本の監視

著者等紹介

ライアン,デイヴィッド[ライアン,デイヴィッド][Lyon,David]
カナダ・クイーンズ大学社会学部教授。近代社会の成立を「監視」という視点から社会学的に捉え直し、近年のテクノロジーの発展が監視社会の動向にどのような影響を与えているのかを鋭く分析する。クイーンズ大学の国際プロジェクト、Surveillance Projectのディレクターも務める。ほかにポストモダニティや現代宗教を研究領域としている

田島泰彦[タジマヤスヒコ]
上智大学文学部新聞学科教授。上智大学法学部卒、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。憲法・メディア法専攻。毎日新聞「開かれた新聞」委員会委員、監視社会を拒否する会の共同代表なども兼務。Surveillance Projectのメンバー

清水知子[シミズトモコ]
山梨大学教育人間科学部講師。筑波大学大学院博士課程修了。英文学・文化研究専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yu-ente-isra

2
少し古い本なので、9.11以前もあったはずの監視体制がそれによって何が変わったのか、何が批判されるべきか、テクノロジー的な面、哲学的な面で書かれています。テクノロジーについては古い本なので現状更なる飛躍的な進歩を遂げていますが、同時テロ後に表面化したプライバシーも弁えず、ありとあらゆる情報を収集しようとする技術にたよりきった監視は、現状さらに加速されていると思います。最近の保護主義的な思想の潮流もこう言った監視の帰結ととらえると少し納得がいきます。自由と安全な監視が共存できる社会を望みます。2017/03/04

ATSUSHI

1
現在の監視社会について学ぶには読んでおいた方がいい。2012/05/28

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/46263
  • ご注意事項