変わりゆく国連PKOと紛争解決―平和創造と平和構築をつなぐ

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  • サイズ A5判/ページ数 362p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750319285
  • NDC分類 319.8
  • Cコード C0036

出版社内容情報

なぜ平和活動を目的とした国連PKOが、ときに紛争解決を妨げてしまうのか。いかなる条件下で国連は紛争解決の一翼を担うことができるのか。選挙監視員として東ティモールやカンボジアで活躍する著者の、キプロスとカンボジアを事例にした最前線の紛争研究書。著者は第二回秋野豊賞受賞者。

はしがき─紛争解決の現場から考える
序 論──平和創造と平和構築をつなぐ
本書の主題─国連PKOと紛争解決の関係
本書の主要な論点
本書の独創性と重要性
本書の構成と概要

第1章 国連平和維持活動の理論的分析
1. はじめに
2. 国連PKOを定義づける
3. 国連PKOの分類型
4. 国連PKOとは何か
第2章 紛争研究における理論アプローチの考察
1. はじめに
2. 紛争分析における主要な概念
3. 基本的な論争「紛争は処理するべきか、それとも解決するべきか」
4. 紛争分析アプローチと国連PKOのかかわり
第3章 概念枠組みの構築
1. はじめに
2. 紛争分析の2つのアプローチをつなぐ
3. 本書の概念枠組み
第4章 紛争解決への障害──国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)
1. はじめに
2. キプロス紛争の概説
3. 紛争成熟度
4. キプロスにおける国連PKOの検証
5. 仲介活動の相乗効果
6. 事例研究のまとめと結論
第5章 紛争解決の踏み台──国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)
1. はじめに
2. カンボジア紛争の概説
3. 紛争成熟度
4. カンボジアにおけ

はしがき─紛争解決の現場から考える
 世界の各地で多くの人々が苦しんでいる紛争を解決するために自分は何ができるのか。この答えを見つけるために、紛争の理論や解決の方法を学びながら、紛争の現場に足を運び、平和構築の実践に身を投じてきた。かれこれ10年にわたり、この答えを模索して、現場と研究室を往復し、試行錯誤を重ねてきたことになる。現場に踏み込むことによって、自分のやるべきことを深く実感することができ、くわえて研究に対する情熱も湧いてきた。
 本書の底流にある問題意識は、このような現場との対話のなかで生まれた。本来、紛争解決の分野は、理論と実践の密接な交わりが必要で、その相互作用のなかで、理論も実践も、よりよいものへと成長していくものだと考える。しかし、紛争後の平和構築の一翼を担う「選挙」の監視員として、カンボジアや東ティモールの現場に赴いたときに感じたことは、実際には理論と実践のつながりが希薄であるという点であった。研究者が関心を寄せているテーマや研究成果が、必ずしも現場のニーズに応えておらず、実践に役立つような知識の蓄積や体系化につながっていない現実を目のあたりにした。かつて、国連難民高等弁務官として難民したノウハウの蓄積をどのようにまとめて伝えていくか。
 このような問題意識のなかから生まれたのが本書である。本書のテーマである「国連PKOの紛争解決における役割」について研究を始めて10年という節目の年に、いままで温め育んできた問題意識をかたちにできた。本書は、「国連PKOと紛争解決はどのように重なりあうべきか」、「紛争の状況に応じて、平和創造、平和維持、平和構築をいかに組みあわせていけば相乗効果が生まれるのか」といった視点から、理論と実践をつなぐことを意識した私にとっての最初の試み、最初のアウトプットである。もちろん、私の研究は途についたばかりで、本書は10年間の集大成というよりは、最初の一里塚であり、成長過程にある研究の経過報告的な位置づけである。
 実際に本書の研究を進めていく過程で、紛争研究と国連PKOについての文献調査を行い、キプロスとカンボジアでは現地調査を実施したが、先行研究においても現場での実践においても、2つの分野の交流不足は否めなかった。紛争解決の文脈では、国連PKOは否定的にとらえられる傾向が強く、したがって紛争解決を促すメカニズムとして国連PKOの可能性が真剣に議論されることはまれであった。他方た。
 そもそも本書は、2003年の8月に私が英国ケント大学に学位論文として提出した英文の博士論文(The United Nations Peacekeeping and the Nexus between Conflict Settlement and Conflict Resolution-A Comparative Case Study of UN Peacekeeping in Cyprus and Cambodia)を日本語に訳して加筆修正したものである。したがって本書は、一部の専門家を対象に構成・執筆されているため、一般読者にとっては専門的で難解な部分が少なくないだろう。
 しかしながら、日本では、紛争研究の理論枠組みを用いた実証研究が少なく、PKOに関する研究についても紛争研究の切り口から分析されたものは、ごくわずかしかない。くわえて、本書で事例研究として取りあげたキプロス紛争に関しても、日本の学界におけるその先行研究はきわめて限られている。また、本書のテーマである「紛争解決」や「平和構築」といった分野は、日本では近年ようやく注目されるようになったばかりで、その研究は端緒についたばかりである。この分野に関心がある大学生や今後このようなテーマについて研究を進めようとしている大学院生や若手研究者が参考にできる学術書は非常に限られている。本書のように、約10年

内容説明

本書は、「国連PKOと紛争解決はどのように重なりあうべきか」、「紛争の状況に応じて、平和創造、平和維持、平和構築をいかに組みあわせていけば相乗効果が生まれるのか」といった視点から考察を試みるものである。

目次

第1章 国連平和維持活動の理論的分析
第2章 紛争研究における理論アプローチの考察
第3章 概念枠組みの構築
第4章 紛争解決への障害―国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)
第5章 紛争解決の踏み台―国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)
結論 紛争処理と紛争解決の結節点をめざして

著者等紹介

上杉勇司[ウエスギユウジ]
1970年生まれ(静岡県出身)。国際基督教大学教養学部を卒業後、米国ジョージメイソン大学・紛争分析解決研究所で紛争解決学の修士号を取得(1996年)、(財)平和・安全保障研究所研究員、(財)南西地域産業活性化センター主任研究員を経て、英国ケント大学で国際紛争分析学の博士号を取得(2003年)。秋野豊ユーラシア基金から第2回秋野豊賞を受賞し、紛争地での研究を進めるとともに、日本政府(外務省)やNGOから国際選挙監視員としてカンボジア、東ティモール、インドネシアに派遣される。現在、琉球大学で非常勤講師(戦争と平和の諸問題)を勤めるかたわら、NPO法人沖縄平和協力センターの事務局長として沖縄発の平和協力を進めている
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感想・レビュー

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島崎与之助

0
◎◎○

YN

0
広島大の上杉氏による国連PKOについての本。キプロスとカンボジアを例にして、どのようなPKOは平和に寄与しうるか、紛争解決の視点から考察する。 氏の博士論文が元になっている。

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