フェミニズム法学―生活と法の新しい関係

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  • サイズ B6判/ページ数 424p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750318530
  • NDC分類 367.2
  • Cコード C0032

出版社内容情報

日常生活に不可欠な法律。しかし権威ある伝統的学問として法学は男性支配の傾向が強く、性差別的側面が多々あるのも事実である。本書は、「労働」「家族」「身体性」の3領域においてフェミニズムの視点から従来の法律論の矛盾を検証しする画期的研究書。

1 労働を生きる……浅倉むつ子
 第1章 均等法とコース別雇用
 第2章 同一価値労働同一賃金原則
 第3章 働き方を考える
 第4章 職場のセクシュアル・ハラスメント
 第5章 ポジティブ・アクション
 第6章 間接性差別の禁止
 第7章 パートタイム労働と均等待遇

2 親しさを生きる……戒能民江
 第1章 家族法改正へ
 第2章 夫婦別姓
 第3章 婚外子差別
 第4章 戸籍と「家」
 第5章 「親密圏」に潜む暴力――ドメスティック・バイオレンス
 第6章 離婚の自由
 第7章 老いを生きる
 第8章 シングルマザーとして生きる

3 身体・性を生きる……若尾典子
 第1章 性と人権――女性の身体と家族
 第2章 「ポルノ」を批判する視点の登場
 第3章 人口論と女性の身体
 第4章 女しか妊娠しない!――中絶合法化の流れ
 第5章 生殖技術と女性の願い
 第6章 買売春と法制度
 第7章 性の自己決定権と性業者・買春者

4 フェミニズム法学をめざして……浅倉むつ子/戒能民江
 第1章 男女共同参画とは――法律と条例
 第2章 司法改革と法学

 法学とは、生活と法との関係にかかわる理論である。しかし、男性の視点が市民社会を支配している現状では、女性の実際の生活が女性自身の言葉で語られることは、なお少ない。だからこそ、女性が生きている現実の生活を直視して、実際にそこで何が起きているのかを認識するところから、法学は出発しなければならない。
 Aさんの夫は、常に「お前は馬鹿だ、何の能力もない」と侮辱し続け、Aさんの首をしめる、殴る、蹴るなどの暴力をふるっていた。暴力は、徐々にエスカレートしていき、子どもにも向けられるようになり、耐えかねたAさんは、離婚を決意して子どもたちとともに家を出た。ところが、ある日、学校の門の前に待ち伏せしていた夫に子どもたちは連れ去られてしまった。夫はその日の内に出国して、自分の国に渡航したのだが、それ以来、子どもたちの行方はわからない。事件が起きたときは、離婚調停の途中で、夫もまだ親権者だったし、国外への連れ去りであったために、警察や裁判所、外務省は、できることはないと冷たく突き放すだけだった。
 いま、配偶者暴力防止法(DV防止法)の改正が進められている。立法にあたる国会議員や省庁関係者とNGOとの意見交換の場には、いつ。
 女性が性役割を付与された「私的領域」は、男性の場である「公的領域」とは区分されてきた。私的領域における労働や経験は、価値のないものとされた。私的領域、すなわち結婚や家族、性、身体といった生活にかかわる問題は、政治的ではない事柄とされ、法の不介入が原則となった。
 女性と法との関係に根本的な変化をもたらしたのは、一九六〇年代に始まる第二波フェミニズムである。それまで個人的な問題として片付けられ、政治の世界では周縁にしか置かれてこなかった問題、すなわち、性的自由や身体の自己決定、結婚制度と家父長制、あらゆる形態の女性に対する暴力について、「個人的な問題は政治的である」というスローガンのもとで、女性たちがようやく語り始めたのである。私的領域における性支配こそ、性差別社会の構造の中核にあることを、第二波フェミニズムは明らかにした。
 学問研究の世界を支配してきたのも男性である。どの学問領域においても、研究を職業にすることは、女性には不向きだと言われてきた。なかでも法律学は、権威のある伝統的な学問として、男性支配の傾向が根強い。もっとも、近年、女性研究者も増えてきており、大学教員の女性比率もある程度あがってれぞれの領域で、できるだけ新しい問題を取り上げつつ、なお理論的ジレンマを抱える問題に対しても、果敢に切り込んだつもりである。読者の方々による率直なご批判を仰ぎたい。(後略)

内容説明

本書のタイトルは「フェミニズム法学」である。本書によって、性差別社会をなくす営みの一翼を担いたいという思いから、また、性差別と人権侵害への闘いのために法を必要としているすべての人たちへの支援となることを願って、あえて「フェミニズム法学」を名乗ることにした。本書によって、法律学が社会の中心に位置してきた男性による「知の世界」であったことを批判しつつ、ジェンダー視点から、新たな法律学を構築しようと試みるものである。本書では、生活と法の新しい関係を創り出すために、「労働」、「家族」、「身体・性」という三つの領域を対象として設定している。

目次

1 労働を生きる(均等法とコース別雇用;同一価値労働同一賃金原則 ほか)
2 親しさを生きる(家族法改正へ;夫婦別姓 ほか)
3 身体・性を生きる(性と人権―女性の身体と家族;「ポルノ」を批判する視点の登場 ほか)
4 フェミニズム法学をめざして(男女共同参画とは―法律と条例;司法改革と法学教育)

著者等紹介

浅倉むつ子[アサクラムツコ]
東京都立大学法学部教授。専攻は労働法、ジェンダー法

戒能民江[カイノウタミエ]
お茶の水女子大学生活科学部教授。専攻は女性学、家族法学

若尾典子[ワカオノリコ]
県立広島女子大学生活科学部教授。専攻は憲法学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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