出版社内容情報
社会的な課題が、個人の努力課題にすり替えられてしまう「貧困問題」。綿密な調査によって貧困が貧困を再生産していくことの痛み、社会的不平等の存在を、もっとも集中的に表出する母子世帯を中心に論証し、社会的保障の立場から課題と展望を明らかにする。
序 章 貧困の世代的再生産の視点…青木紀
1 問われてこなかった「貧困の世代的再生産」
2 貧困の世代的再生産分析の社会的意義
第1章 貧困の世代的再生産の現状―B市における実態…青木紀
1 調査世帯の概要と貧困の世代的再生産の「事実」
2 貧困・不利の世代的再生産の諸側面と連鎖の構造
3 家族形成過程における不利の移転
4 経済状況とネットワークに見る不利の構造
5 今後の展望をめぐって
第2章 貧困と子ども…小西祐馬
1 社会階層と子どもの生活・意識
2 日常生活と学校体験
3 将来展望
第3章 社会的不平等と一〇代の性…鈴木佳代
1 高校生の生活状況・将来展望と性行動
2 社会的不利とハイリスクな性行動
3 若者の分化と性行動・性意識
第4章 家計と管理の階層性…鳥山まどか
1 世帯の資源
2 資源の階層性
3 子どもの教育・進学と家計管理
4 資源と家計管理
第5章 貧困家族とスクール・ソーシャルワーク…岩田美香
1 親の生活条件と子どもの生活
2 問題解決と家族
第6章 貧困家族の自立支援
出口どころか、なお底も見えないままに続いている未曾有の不況。失業の増大、賃金切り下げ、年金切り下げ、医療費や教育費の増大など、いわゆる生活不安はますます深刻化してきている。中高年の自殺やホームレス問題、あるいはセーフティネットとしての生活保護制度などが、特集記事として新聞などにも大々的に掲載されるなど、ようやく「遠くの貧困」ではなく、「近くの貧困」が語られ始めたかに見える。だが、どこまで貧困の現実が見えているかといえば、はなはだ心細いようにも思う。
二つの意味において心細いのである。一つは、たとえばホームレスの人々の存在への共感と差別は、たびたび新聞やメディアが取りあげるものの、生活保護受給家族や母子世帯として児童扶養手当を不可欠としている家族などの貧困は、地域社会のメインストリームからはずれ、いわば潜在化されて存在しているがゆえに、現実の規模に比較して、なお一般に目に見えにくいことである。今一つは、本来的にはアドボケート(擁護・代弁)すべき関係者においてさえ、現実の彼らが抱えている生活困難・貧困をBlaming the Victim(犠牲者に責任を転嫁すること)する傾向が強いことである。いいかえれば、貧困は個人や家族の
目次
序章 貧困の世代的再生産の視点
第1章 貧困の世代的再生産の現状―B市における実態
第2章 貧困と子ども
第3章 社会的不平等と一〇代の性
第4章 家計と管理の階層性
第5章 貧困家族とスクール・ソーシャルワーク
第6章 貧困家族の自立支援とケースワーカー
第7章 アメリカの貧困家族と自立支援の現実
終章 課題と展望―「見えない」貧困を見えるように
著者等紹介
青木紀[アオキオサム]
1948年愛知県生まれ。京都大学大学院農学研究科農林経済学専攻博士課程単位取得退学。東北大学農学研究所・農学部助手、北海道大学教育学部助教授を経て、現在、北海道大学大学院教育学研究科教育臨床講座教授(教育福祉論・農学博士)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
-
- 和書
- 氷の下の暗い顔 角川文庫
-
- 和書
- 無常の月 ハヤカワ文庫