出版社内容情報
戦国の荒波を乗り越え、肥後熊本藩主となった細川家。主君への忠義が絶対ではなかった時代、筆頭家老松井康之と息子興長の価値観は細川家の存続にいかなる影響を与えたのか。天下人とのつながり、主君の守り立て、島原・天草一揆における九州諸藩との連携などから、主家の存続を第一義とし、藩政の維持・発展のため力を尽くした家老の生き様を描く。
内容説明
戦国の荒波を乗り越え、肥後熊本藩主となった細川家。主君への忠義が絶対ではなかった時代、筆頭家老松井康之と息子興長は細川家存続にいかなる影響を与えたのか。主家と藩政の維持・発展に尽くした家老の姿を描く。
目次
細川家を支えた家老の忠義―プロローグ
家老への道のり
政権移行期の松井康之
御家第一主義の継承
八代城主としての松井興長
家老による藩主守り立て
細川家を永続ならしめた康之と興長の生き方―エピローグ
著者等紹介
林千寿[ハヤシチズ]
1968年、熊本県に生まれる。2009年、熊本大学大学院社会文化科学研究科文化学専攻博士課程修了、博士(文学)。現在、八千代市立博物館未来の森ミュージアム学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
14
肥後細川家を支えた名家老、松井康之・興長親子にフォーカスした一冊。同じ幕臣で同僚だった細川藤孝に仕え、秀吉や家康と親交を深めながらも細川家に尽くした父・康之。忠興・忠利・光尚・綱利の4代に仕え、大藩の宿老として務めを果たした興長。この親子の生涯を通して当主個人への忠義ではなく、公儀への奉公と「主家」の存続を第一に考える近世初期の家老の在り方を紹介する。徳川泰平の世を支えた一因に、こうした新しいタイプの家老たちがいたことがよくわかる。また、そんな松井親子の期待に応えた細川家歴代の当主の姿も印象的であった。2021/11/07
カール
7
古文書の先生は松井家親子を細川家のフィクサーと語った。ネット上では多くの注目を浴びる細川家。一方で大阪の陣で豊臣方につきながらも、後ほど細川家に復帰し家老の一人となった米田是季やこの本でも紹介されている松井親子の様に特殊な経歴を持った人物がただいるのである。これが細川家が持つある種の気味の悪さに繋がっていると思う。さておき、この本では松井家の忠義に注目し、織豊時代末期から近世初期の幕藩体制の黎明期に彼らはどのように忠を尽くしたかを見ていくのがこの本の趣旨になる。松井家の書籍は基本無いからとても貴重だ。2021/04/06
圓子
4
スーパー家臣松井康之・興長。この二人の「忠義」に主眼を置いているので、多少割り引いて読むべきところもあるのかもしれないけれど、それにしても。お家大事の精神で家老職を全うしたことはわかった。では、なぜ?が次に来る。なぜ主家を倒す…まではいかなくても、独立しない途を選んだのか。本書の内容をみる限りでは、独立を選択する実力も機会もあったように見えるが。そうしなかった理由、なにをどこまで見通してお家大事を貫くことにしたのか。2021/11/09
フランソワーズ
4
細川家の名家老松井康之・興長父子の生涯を追いながら、主家への忠義を考察。その際、肥後加藤家とその家老を引き合いに出し、戦国から近世の流れのなかで、家老はどうあるべきかを検証しています。確かに父子ともども、時勢を良く見極め、いかにして御家を保つかということを一番に考えた名家老。康之などはその気になれば、独立した大名になることができたのに、細川家中に留まった。己を知る、分を弁えるというのはこういうことを言うのでしょう。→2021/11/09
伊達者
1
細川家の家老松井康之・興長親子の事績や考え方を描いてお家を守るに家老が如何に大切だったかを分かりやすく描いている。それにしても立派な人物である。名脇役というところだし、その記録を今に保管しているという松井家も大したものである。2022/12/29