内容説明
神として東照宮に祀られた徳川家康。秀吉に続いて「実在の人物の神格化」が行われた経緯を、天道思想や天海との関係から追う。また宗教理念を支配の正当性とし神話が確立する様子に、日本人の神観念を明らかにする。
目次
人が神になること―プロローグ
神格化の時代
徳川家康と天海
徳川家光と天海
東照宮信仰の展開
神を作り出したもの―エピローグ
著者等紹介
曽根原理[ソネハラサトシ]
1961年、東京都に生まれる。1984年、東北大学文学部史学科卒業。現在、東北大学学術資源研究公開センター助教、文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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wang
1
人は死んだら神になるとか、人を神格化して崇めるとか言うが、単に個人を敬い尊ぶだけと思ったらとんでもない間違いだった。東照大権現として祀られた家康が鎮護国家や徳川家を護るためだけではなく、将軍家の権威を天皇家=天照大神の権威と別に立てそして実際に徳川家以外からも神として祀られてきたことを示している。そのために吉田流神道から山王権現、天台宗、浄土宗などの宗教家たちが利用され理論付けられる過程は思ったより奥が深い。さらに独自の宗教権威を持っていた将軍家=日本国王と、天皇家の王権との関係にまで及ぶのは興味深い。2014/12/19
駒場
0
信長、秀吉の神格化に関して、天下人が本願寺に匹敵する思想性・イデオロギー性を持った存在となる必要があったというところから始まる。そして「孤立して滅びた」秀吉神を見てきた家康は、新たな神は、秀吉神を助けてはくれなかった従来の天皇家という神を超えた力をもつ必要があると認識したのではなかろうかと。結果として近世日本の人々にとって自らの属する共同体イメージは「武威によって反映する神国・仏国」となり、それをもたらしたのは「権現様」なのであって、そこに「禁裏様」が割り込む余地はどの程度あったのか、という話2016/06/05
kino
0
天道思想と天台宗2012/08/06
秋津丸
0
「一周忌を過ぎたころに日光に小さな堂舎を建て神霊を勧請せよ。自分はそこで「八州」の鎮守神になるのだ」という、家康の遺言の理由を知りたかったのがこの本を読む動機だった。 この疑問の回答にはならなかった。とはいえ、家康の宗教に対する考え方、吉田流神道思想の影響もあったこと、天海や家光が家康を神君化していく過程など、おもしろかった。 ただ、本の最初のほうで、信長、秀吉に続いて神格化を目指してとあったが、信長の生きながらの神格化と、秀吉・家康の死後の神格化は、ちょっと違うのでは?と思う2012/09/18