内容説明
鎌倉時代末期の政治家。霜月騒動に連座して不遇の幼少期をおくるが、得宗家の信頼を得て六波羅探題・連署となり、病弱な執権北条高時を支えた。15代執権に就任するが、政争の激化により辞任、幕府の滅亡に殉じた。膨大な貞顕書状から、高時政権を再評価し、称名寺造営や金沢文庫本の充実から、鎌倉の武家文化に足跡を残した権力者の実像に迫る。
目次
第1 貞顕誕生
第2 六波羅探題南方時代
第3 引付三番頭人から六波羅探題北方へ
第4 北条高時政権の連署として
第5 動乱のはじまり
第6 滅びゆく人々
第7 貞顕の被官人
第8 貞顕の所領
第9 貞顕の評価
著者等紹介
永井晋[ナガイススム]
1959年生まれ。1986年国学院大学大学院博士課程後期中退(文学修士)。現在神奈川県立金沢文庫主任学芸員
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感想・レビュー
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ようはん
16
北条高時といえば田楽や闘犬にうつつを抜かして衰退傾向の鎌倉幕府にとどめを指した暗君のイメージであるが、大体は太平記等の勝者側による記録や物語で作られた脚色で実像としては暗愚というよりは病弱という言葉が当てはまり精力的な政治が行えなかった印象が強い。本書の主人公である貞顕は立ち位置は重時や政村のような傍流の有力者として高時を支えた調整型の政治家で文化事業にも力を入れた有能寄りの人物であるが幕府の衰運に抗せなかった印象。 2021/08/09
MUNEKAZ
12
最末期の鎌倉幕府で執権・連署等を務め上げた人物の評伝。気配り上手の調整型保守政治家というケレン味のない生涯が淡々と綴られる。同時代を生きた後醍醐天皇や足利尊氏、楠木正成らの鮮烈さと比べると、味気ないのは否めない。ただ俯瞰してみれば、北条氏の中でも決して上級ではなかった金沢流の家格を大幅に上昇させた重要人物にも見えてきたりする。もし後醍醐の蜂起が完全な失敗に終わっていたら、幕府がもう少し長く続いていたら、文化事業の足跡(『金沢文庫』ですよ!)と併せて、もっと大物扱いされている人物になったのかもしれない。2020/08/06