内容説明
中世の人びとはどのようにして書物を利用し、「知」を紡ぎ出したのでしょうか。数多くの書物の中から、規範となる古典が選別されると、引用され分類され注釈され、新たな書物が生まれました。この間、多種多様で無秩序にも見える書物の世界にも、中国の学術に強い影響を受けながら、少しずつ学問の体系が構築されていきました。本書では、各時代における古典研究の展開を辿りながら、中世の学問の一端に触れることにします。
目次
「古典」意識と学問
1 書物をつくる
2 書物をよむ
3 書物をあつめる
4 書物をひく
5 ふたたび書物をつくる―注釈書
写本文化に規定された学問
著者等紹介
小川剛生[オガワタケオ]
1971年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程中退。専攻、中世文学・和歌文学。現在、慶應義塾大学文学部准教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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軍縮地球市民shinshin
10
中世とはいっても、平安時代の話も出ているので、厳密には中古・中世か。国文学史の時代区分では平安は「中古文学」という独立した名称が与えられている。奈良は上代文学、鎌倉・室町が中世文学。ちなみに日本史では平安までが「古代史」という。この時代区分のズレが、中世というタイトルの本に平安の事例を入れてしまったので、なんか違和感を感じた。著者は国文学者なので違和感はないのかも。内容は非常におもしろい。タメになる。特に『源氏物語』を例にした中世の古注釈の衒学ぶりが初めて知った。なるほど。こんな感じなのだね。2018/10/01
紙魚
4
書物の分類が始まるとき、それは書物への理解が深まったとき。分けるためには分からねばならない。道理、道理。2010/01/25
きつね
3
「かりに一切の外部資料なくして、『明暗』と『続明暗』という、無署名の二種類のテキストしか残らなかったとしたら、あるいは偶然の結果として完結した形の『続明暗』しか存在しなかったとしたら、内容から両書の関係を探り当てることができるであろうか。」そんな思考実験を枕に語り出されるのは、時の無情な淘汰に辛うじて生き存えた僅かな「書物」たちから復元されていく中世の「学問」の世界。書写・校訂・講読・蒐集・抄撮・分類・検索・注釈といった項目から当時の書物の有り様を概説する。系図付きの注など、初学者への配慮が行き渡った本。2012/05/04
hashirumizu
2
複写、解釈、集積など、人々の手を経てどのように書物が成っていったか、そのうえで学問が書物をどう受け取り、書物が学問をどのように育て、さらにそれが書物にどのように還元されていったかという相互のやり取りがよく分かる。薄くて読みやすいのに内容が濃く、何度でも読み返したくなる。2019/05/06
こんがら童子
2
非常に刺激的な本だった。内容もさることながら、書きぶり、論理展開もとてもわかりやすく、とても好感を持った。また、中世の学問がなにで、どのようなところに学問性を感じていたのか、そしてどのように学問していたのか、と言うことを知る事ができた。当時の人々は当然コピー機がないの手で写すわけだが、その「手で」ということが一見非効率的だと思われるが、実はその手作業がどれほど学問に重要なのか、という点も改めて感じさせられた。つまり頭だけの学問ではなく、身体での学問の有用性を再確認させられた。というように、色々と刺激的だっ2010/07/01