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出版社内容情報
〔遊びの図像学〕フランドル派の画家ブリューゲルの一枚の絵から社会的・民俗学的・宗教的意味を析出し、あわせて西欧子供観の通説を破った労作。1989年度サントリー学芸賞受賞
内容説明
本書はブリューゲルの「子供の遊戯」の比較文化史的研究を行ない、中世、近世初期の「子供観」に対して大きな影響力をもったアリエス解釈の修正を提唱するものである。さらにこの作品に描かれた91種類の個々の遊びを分析することで、子供の遊戯が16世紀後半に絵画の主題として登場してきた時代背景、フランドルだけでなく、広く北ヨーロッパにも共通する伝承遊びとそれらの関係、今日では知られざる当時の遊びの内容や遊具の作り方とその意味、中世や近世初期の文学で詠われた遊びのアレゴリーとの関わり、遊ぶ子供に興味をもつ同時代人の意識、などの諸点がある程度、解明されるであろう。
目次
第1章 ブリューゲルの「子供の遊戯」、その作品成立の背景(ブリューゲルとアントウェルペン;ブリューゲルの略伝;「子供の遊戯」の来歴、「子供の遊戯」の様式的特徴、「子供の遊戯」の人物配置と色彩;作品解釈の諸説;季節にみる子供の遊戯)
第2章 「子供の遊戯」の図像学(お手玉遊び;人形遊び;人形の家;祭壇ごっこ;梟の巣箱;水鉄砲 ほか)
第3章 西洋美術史における子供の遊戯(古代ギリシア・ローマ―遊びは子供にとって有益;中世―区別しにくい子供と大人の遊び;ルネサンス;17世紀―遊びの寓意性)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
346
巻頭に1枚の絵が掲げられている。原寸は118×161cm、ウィーン美術史美術館蔵の『子どもの遊戯』だ。製作は1560年。一目でピーテル・ブリューゲルのものであることがわかる絵である。色彩も構図もまがうかたなきブリューゲル。ただ、他の絵と少しだけ違うのは、この絵の中に描かれている250人にも及ぶ人物像のすべてが遊ぶ子どもたちであること。遊戯の種類はなんと91種類に及ぶらしい。らしいというのは、そんなものを克明に数え上げるのは特殊な美術史家くらいであろうから。本書は、まことに頭の下がる労作である。⇒2023/02/02
シルク
14
ブリューゲルって画家の描いた、「子供の遊戯」って絵画があるでしょう。画面いっぱい、ちっちゃな虫みたいに細々と、色んな遊びしてるこども達が描き込まれている絵。……うん、すんごい細かくて、カマキリとかね。虫の卵見てる時みたいな感じになってきたりもする……って、言ってるそばからゾゾゾゾゾッ(←鳥肌)。本書はそのこども達の遊びをひとつひとつ丹念に取り上げて、何の遊びをしているのかを明らかにした研究。自分の足を掴んで丸くなり、丘から転げ落ちる遊び。道端の大便を棒で突っつく遊び……面白い絵だなアレ、としみじみする本。2015/12/21
owl&shepherd
6
非研究者が読み通すのは少し辛かったが、『バベルの塔』のブリューゲル本が読みたかった。子どもたちはどんな時代でも遊びで創意工夫を学ぶ。なにせ豚の膀胱が遊び道具になるからね。いろいろな使い道には感心した。今から子育てする親が読むべきかな。2016/08/04