出版社内容情報
本書はドイツの公法学・政治学のなかに顕著な足跡を残したカール・シュミットの古典であり、著者自身の入門的書でもある。巻末に訳者の「シュミットの『友・敵』理論」を付す。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
42
あえてざっくり言うなら、シュミットの主張する「政治的なもの」に関する論旨展開はいたってシンプルだ。①あらゆるもの・ことは「政治的なもの」という性質から逃れられない(すべての概念は政治性に収斂する)②「政治的なもの」において対立する概念は(公的な)「友」と「敵」である③「友・敵」互いの利益が侵犯される場合ないし国家における「緊急事態」において、最終手段としての戦争や独裁体制は是認される、といったところか。もちろん「ロボット三原則」よろしく上記のような飛躍した簡潔さがあるわけではないし、2021/03/07
傘緑
38
「一国民が、政治的生存の労苦と危険を恐れるなら…この労苦を肩代わりしてくれる他の国民が現れる」こうして独裁者は生まれる。「一国民が、政治的なものの領域に踏みとどまる力ないし意志を失うことによって、政治的なものが、この世から消え失せるわけではない。ただ、いくじのない一国民が消え失せるだけにすぎない」「正義が戦争の概念と相容れないものであることは、グロチウス以来一般に認められている」 「名か?実か?」の外交交渉で率先して名を取って、プーチンに盛大に笑われたオバマ大統領。今からでも遅くないからこの本を読みなさい2016/12/28
さきん
29
敵と味方がまずあって主導権争い、権力争いが起こって、政治が起こるという考え。自由主義だと理性を信じ、いつかは戦争がなくなり、国も無くなるだろうという理想を目指すが、著者はそんなのはあり得ないからこそ国、政治が必要だと断言する。敵、味方があってという前提から政治を規定していく見方には同意しかねるが、人々の考えがまとまらず敵意が醸成されていく世の中がいつまでも続くという見方はその通りだと思った。2018/03/31
masabi
24
【要旨】政治の本質を敵と味方に峻別することに求める友敵理論の解説である。【感想】異質な他者をどうするか、正義の戦争はあるかなど現代でも度々論争になる事柄についても論じ一定の判断を下した、という意味で現代思想でも再評価されているそうだ。もっともシュミットは他者の殲滅を帰結したのだが。友敵理論は具体的にどう活かせるのかという部分は続編で補完されているのだろうか。二項対立的に論を進めるぶん内容をわかった気になれる。2016/10/29
壱萬弐仟縁
23
1932年初出。敵とはただ現実的可能性として、 抗争している(傍点)人間緒総体―他の同類の総体と対立している―なのである。 公的(傍点)な敵しかいない(18頁~)。敵という概念には、闘争が現実に偶発する可能性が含まれている。闘争は技術の史的発展によって生じた偶発変化を度外視する。戦争とは、組織された政治単位間の武装闘争(25頁)。人生全体が戦いであり、すべてが戦士なのだ。敵対とは他者の存在そのものの否定(26頁)。2015/08/30