出版社内容情報
【内容】
幻視、悪魔憑き、レスビアニズム……「メディチ家雑録」に残された宗教裁判の記録から再構成された修道女ベネデッタの物語。そのドラマの中から、知られざる近世の素顔が蘇ってくる。
【目次】
第1章 家族
第2章 修道院
第3章 修道女
第4章 第一の審問
第5章 第二の審問
エピローグ
内容説明
本書は「メディチ家雑録」に遺された裁判記録をもとに再構成されたベネデッタ・カルリーニの物語である。山人、幻視、悪魔憑き、レズビアニズム…生き生きとして、恐ろしく、また魅力に溢れる彼女の生涯は、それ自体が修道院ポリティクスの舞台の上で演じられたドラマであり、近世を映し出す等身大の鏡だといえよう。
目次
序論
第1章 家族
第2章 修道院
第3章 修道女
第4章 第一の審問
第5章 第二の審問
エピローグ
付録 史料紹介、ならびに抄訳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
27
アビラの聖テレサの法悦を描いたベルニーニの彫刻からも明らかなように、神との霊的結婚はしばしば聖痕などの肉体的苦痛を伴い、ほとんど性的快楽に近づくが、そこから現実の人間への性的な憧れまでの距離はあと一歩なのだろう。驚かされるのは、女子修道院の修道女同士の同性愛そのものよりも、男性の聖職者が同様の行為をしたり女性に子を産ませたりするのが公然の秘密で黙認されてきたのに比べて、彼女らの行為があまりにも非対称に忌むべき醜聞とされ断罪されたこと、そして、女性に性欲はないものとされた時代の、修道女たちの性的率直さだった2023/09/05
くさてる
19
バーホーベンが映画化した(「ベネデッタ」)内容を知り、興味が湧いた一冊。キリストを幻視し、聖痕を受けたと語る修道女。しかし、彼女は本当にそれを体験したのだろうか、という内容を学術的に解析したもの。わたしにキリスト教と、17世紀イタリアの修道院という舞台の知識がないので、本当の面白さの半分も理解できてないのだろうなと思いました。それでもその複雑さが興味深く、面白かった。映画も見たいです。2023/02/28
garth
10
「ベネデッタは全修道女のうちでもいちばん清潔好きだった。聖フランチェスコ、シエナの聖女カテリーナ、そのほかの諸聖人たちは、清潔さなどには無頓着だったので、修道女たちだけではなく俗人たちもこれには驚いた。そして彼女が恍惚状態にあるとき、天使がこのことについて弁解して、これらの聖人たちは彼女がもっていた守護天使たちももっていなかったではないか、と言った」2023/01/06
kinka
6
ポール・バーホーベンが映画化したらしいとの情報を得て、図書館で借りる。読んでみたら確かにこれはバーホーベン的な…人の野心とか欲望とか、何より多面性について思い至らされる刺激的な本だった。ルネサンス時代に、大したコネも持たないのにも関わらず、自身の奇跡の力を利用して、新興の女子修道会で院長にまで上り詰めた女性の生涯を描いた歴史本。決して大げさでない語り口からでも滲み出てくる彼女の信念、狡さ、知恵、欲望が、実録モノ?とは思えないほど、まああからさまで見事なこと!そしてその挫折は何という重苦しさであることか。2022/02/13
tekka
1
「教会の草創期以来、女性は説教したり、教え諭したり、つまり人前で話すことはもちろん、神の家で口を開くことも禁じられていた。」2023/04/14