理想の教室
ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学

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  • サイズ B6判/ページ数 153p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784622083030
  • NDC分類 778.253
  • Cコード C1398

出版社内容情報

あなたはこの映画をごらんになったことがありますか? では殺人事件はほんとうに起きたのでしょうか? 1本の映画を徹底的に「見る」こと、分析することを通じて明らかとなるのは、もうひとつの奥深いサスペンスです。外見と内実の乖離――映画学最前線の真髄をお見せします。
加藤幹郎(京都大学)

内容説明

事件は無事解決、映画は大団円へ。いや、男はほんとうに妻を殺害したのでしょうか?一本の作品を克明に「見る」こと、徹底的に分析することで浮かび上がる二重のミステリ。「ヒッチコックの映画的冒険、その胆力、その果敢さにわたしたちは心底おどろかねばならない」―シネマ・スタディーズ最前線の真髄をお見せします。

目次

『裏窓』あらすじ
第1回 二重のミステリ(言い漏らされていること;代表作;裏窓とスクリーン ほか)
第2回 外見と内実の乖離(「婦人消失」の謎;視線を発見する視線;新妻と亡霊 ほか)
第3回 映画史のなかのヒッチコック(奇妙な愛の寓話;「ひとを愛すること」と「ひとを見ること」の関係;「わたしはあなたを愛しています」 ほか)

著者等紹介

加藤幹郎[カトウミキロウ]
1957年生まれ。映画批評家。映画学者。京都大学大学院人間環境学研究科助教授。京都大学博士。電子ジャーナルCineMagaziNet!編集委員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

大泉宗一郎

10
ヒッチコックの名作『裏窓』を題材に取り上げながら、彼の作品に見られる「内実と外見の乖離」を論じたテキスト。殺人事件は実はJ・スチュワートの願望なのではなかったのか、という問から、冒頭のG・ケリーのネガフィルムと雑誌と、裏窓から映る住人の生活模様から主人公たちの恋仲の今後を暗示しているという指摘まで、意表を突く内容が多く中々楽しめた。後半はやや眉唾な気もしないでもないが、従来のハリウッドの定型を、それを装いつつ崩そうとしたヒッチコックの試みの痕が見られる作品としても『裏窓』が傑作だという事実に変わりはない。2015/06/13

crysalis

5
ヒッチコック『裏窓』を中心に、映画における「外見と内実の乖離」という視点から様々な作品を読み解いていく。実は殺人事件は起こっていなかったのではないかという疑問から展開する『裏窓』分析は、映画を見る視点の一助として非常に面白い。切り返し、クロースアップ、長回しといった映画における視覚の在り方、その映画史における様々な工夫を知ると、これまで自分がどれだけの誤認をしてきたかとこれまで見てきた映画を見直したくなってくる。2019/05/31

王子

3
ヒッチコック映画の楽しさと、ヒッチコック映画を考えることの楽しさが詰まった本。『裏窓』がいかに傑作であるか。僕はこの本でヒッチコック映画の楽しさを知った。

ときのき

2
『裏窓』では、実際には殺人が起こっていないのではないか、という仮説をもとにして証拠を挙げていくところは面白い。論考も刺激的。ただ、”証拠”の採用の恣意性が気になった。自説に都合の悪いものは監督当人の言葉でも疑うのは、まあ本人が言ってたから必ず正しいとは言えないのはその通りだが、少々やり過ぎじゃないかなあと。アクロバティックな論証のために事実を犠牲にしている印象があり、それでいて他者の批評を批判していたりもするのがどうもこう。2019/01/10

yunomi

2
『「ブレードランナー論」序説』もそうだったが、加藤幹郎の映画批評を読むと、自分が映画について重要な部分を見逃していた事に気づかされてしまう。本書は、ヒッチコックによるサスペンス映画の傑作『裏窓』を題材に、そのミステリとしての特異な構造を分かりやすく解説している。ミステリというのは受け手を「騙す」事に存在理由がある筈だが、『裏窓』でヒッチコックが欺いているのは、意外な犯人とかトリックとか、そういったミステリ的タームに回収されるものではなく、映画そのものの基盤を突き崩す様な部分にあるのだ。2010/11/16

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