出版社内容情報
国が消えるとはいかなることか? コペルニクスやカントそしてヒトラーに関わる国への旅。現代史の未知の闇、過去と現在を探る紀行。
内容説明
国が消えるとはいかなる事態か?カント生誕の地、ヒトラーの狼の巣、タイタニックを超えるグストロフ号の惨事。過去を尋ね、未来を探る紀行記の名品。
目次
グストロフ号出港す
水の国
城のある町にて
マレンカの町
狼の巣
ヒトラー暗殺未遂事件
水陸船第一号
カントの町
海の道
カントの墓
琥珀の木箱
タラウの娘
メーメルのほとりで
風のホテル
黄金の門
死せる魂
著者等紹介
池内紀[イケウチオサム]
1940年、兵庫県生まれ。ドイツ文学者、エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
59
再読。独文学者池内紀がギュンター・グラスの翻訳を機に、今はない「東プロシア」を旅する。バルト海沿いに延びた中世騎士団領に起源を持つこの”国”は、一次大戦で飛び地となり、二次大戦後、ポーランド及びソ連領となり消えてしまった。辺境のイメージだが、かつての首都ケーニスベルクにはコペルニクスが生まれ、哲学者カントが活躍。紀行は港町グディニアから。大戦末期、ソ連軍に追われた避難民を満載し出港した客船グストロフ号。その夜、真冬のバルト海でソ連潜水艦に撃沈され九千人以上が犠牲に。知られざる史上最大の海難事件が語られる。2019/07/15
KAZOO
10
東プロシアがポーランドの東にあるとはイメージ的に認識していませんでした(ドイツの歴史は結構勉強していたつもりですが)。そこを探訪して歴史と紀行をかねてよく調べ上げたものだと感心しました。あまり表に出てこない歴史の暗部なのでしょうが、池内さんはよく自分の目と足でたどられたものだと敬服しました。まだまだドイツの歴史ではわからないこともあるので勉強しなおしです。2013/11/08
belle
5
プロシア(プロイセン)ではなく東プロシアとはあまり聞きなれていなかった。「凍てつく海のむこうに」を読んで興味を持ち、巻末の参考図書からこの本を選んだ。ゆるやかな民族共同体だったが、国は消されて多くのドイツ人難民が生まれた。カントやホフマン。シュリーマンにコペルニクスやビスマルクの名も登場する。「凍てつく~」のグストロフ号の悲劇と琥珀の間についてももちろん語られる。新たな国境の線引きで町の名も変えられた。カリーニングラードにはなかなか馴染めない。2018/08/04
hakodadi
3
ラトヴィアの情報を渉猟中に発見。第2次大戦前にバルト海沿岸にあった国、東プロイセン。ドイツの東方進出の大義名分とされ、大戦後にはポーランドと旧ソ連に分割領有。住民の大半を占めたドイツ系住民は大半が祖国へ帰還(又は死亡)した、いまや幻となった国。祖国とは、領土とは何かをあらためて考えさせられる歴史の、にもかかわらず戦後もほとんど顧みられることなく封印された事実。なかには9,000人という未曾有の海難事故という悲劇も含まれる。旅のエッセイ風の著者の筆に乗せられて一気に読み継ぐも、読後は沈鬱。2016/09/26
hikarinohe
3
東プロシアは前から興味があって、しかもそのテーマを好きな著者が執筆していると聞いて、嬉しくてそく買いした本。本の趣旨とは違うと思うけど、苛烈な陣取り合戦を何千年も繰り返してきたヨーロッパの国は、やっぱり何か作りがしっかりしてるし、負けた後の処理も手馴れてるなという印象が頭をよぎった2013/12/26