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人生と運命〈3〉

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  • サイズ B6判/ページ数 434p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622076582
  • NDC分類 983
  • Cコード C0097

出版社内容情報

独ソ戦後、独裁制は形を変えて続く。人は困難の中で守ったものを、栄誉の後で失っていく。愛、自由、人間として生き死ぬ意味を描く。

内容説明

1942年11月、スターリングラードのドイツ第六軍を包囲する赤軍の大攻勢は、百時間で決着した。戦争の帰趨を決する戦闘が終わった。反ファシズムの希望、世界の目をくぎ付けにした都市は廃墟になった。その瞬間からスターリンは、ユダヤ人殲滅の剣をヒトラーからもぎとり、やがて国内のユダヤ人にふり降ろす。戦後の自由な暮らしを夢みて戦った国民に、一国社会主義の独裁者はたがをはめ直した。物理学者ヴィクトルは、核反応を数学的に説明する論文を観念論的と批判される。彼は懺悔をしなかった。失職して逮捕される不安に怯えながら、良心を守ったことで心は澄んでいた。ところが突然、スターリンからヴィクトルに電話がかかってくる。状況は一変し、彼は称賛に包まれるが、原子爆弾開発への協力をもはや拒否できない。困難の中で守った自由を、栄誉の後で失う人もいれば、幸せな記憶ゆえに苦難に耐える人もいる。栄光、孤独、絶望と貧窮、ラーゲリと処刑。いかなる運命が待っているにせよ、ひとは人間として生き、人間として死ぬ。この小説は、個人が全体主義の圧力に耐えるのがどれほど困難だったかを描いている。奇跡のように生きのびた本が今、日本の読者を待つ。全三部完結。

著者等紹介

グロスマン,ワシーリー[グロスマン,ワシーリー][Гроссман,Василий]
1905‐1964。ウクライナ・ベルディーチェフのユダヤ人家庭に生まれる。モスクワ大学で化学を専攻。炭鉱で化学技師として働いたのち、小説を発表。独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。43年、生まれ故郷の町で起きた独軍占領下のユダヤ人大虐殺により母を失う。44年、トレブリンカ絶滅収容所を取材、ホロコーストの実態を世界で最初に報道する。次第にナチとソ連の全体主義体制が本質において大差ないとの認識に達した

齋藤紘一[サイトウコウイチ]
1943年群馬県生まれ。東京大学理学部化学科卒。在学中に米川哲夫氏にロシア語を学ぶ。通産省入省後、課長・審議官を務める。93年退官後、ISO(国際標準化機構)日本代表委員、独立行政法人理事長等をへて現在、翻訳家。99年、通訳案内業免許(ロシア語)取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

196
スターリングラードにおけるソビエトの 勝利..ファシストと闘い、勝利した国民は 皮肉なことに 結果として 自国に 独裁者スターリンを生み出す。 クルイモフは転び、ヴィクトルはスターリンからの電話に狂喜する.. 第3部は ひたすら 苦悩の果てに 運命を 受け入れる人々を描き続ける.. この本の凄さは書かれた内容も さることながら、 ソビエト必死の発禁処分にもかかわらず、 生き残り 何があったのかを現代に伝えてくれた ことにある.. そんな著者の執念を感じた読書だった。2017/06/09

ケイ

124
私は不運だと思ったことはない。運命も大して信じていない。運は自分で切り開くものだ、自分の気持ちや生き方次第でどうにでも変えられるものだと信じてきた。しかし、ユダヤ人に生まれたら…、それはもう運命としか片付けられないのだと作者に教えられる。訳者によると、タイトルの「人生」は「生きること」が一番近いらしい。「生きていくこと、そして運命」 確かにこの作品の内容にこれ以上のものはあるまい。ドイツのナチズムは、ソヴィエトのスターリン主義に憑依していき、ユダヤ人の運命もまたスターリンの手に渡ったのだ。2016/12/30

NAO

65
自分の論文の正当性を守り通したヴィクトルを待っていたのは、あまりにも巧妙な罠だった。ヴィクトルだけでなく、多くの人々が、人間性を踏みにじられていく。人は自分の判断で物事を行ってはならない、命令にただ忠実な機械となれ、とするスターリンのやり方は、「人間の自由」を剥奪する。そして、ヒトラーがユダヤ人殲滅を行ったとき、スターリンはそのやり方をソヴィエトに持ちこみ、国内のユダヤ人や少数民族に猛威を振るった。だからこそ、作者は何度も繰り返し言う。ドイツのナチズムとソヴィエトのスターリン主義は同じ全体主義だ、と。 2017/12/15

Willie the Wildcat

60
表裏一体化した2つの世界で揺れる心。ヴィクトルとクルイモフの対比。ロス氏の『死の受容モデル』が頭に浮かぶ。論理的帰結が、2人の運命の差異という印象。代償は、前者が心の自由であり、後者は命。共通項はもれなく”孤独感”。但し、印象的なのはリュドミューラ/エヴーニヤ姉妹の孤独感。ヴィクトル/クルイモフの「自」に対する「他」。伝わらないもどかしさに愛情。極限下で問い、問われる人間性。辿りつく心底。これもまた論理的帰結と言える。アレクサンドラの憂い・・・、絶望であり希望。故の表題。印象に残る一冊となりそうだ。2017/01/30

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

32
スターリングラードはソビエト軍が勝利して、ドイツ兵は捕虜となりボロボロの衣服のままの行進。スターリン体制下のロシアの冷ややかさ不気味さ。人々は密告を恐れ、あやうくなり始めた人からは潮が引く様に背を向ける。また、スターリンが微笑みを向けた途端死ぬほどの優しさ親しみへつらいの渦。潮目が変わるとそこら中敵だらけというのは、戦場よりもっと厄介ではないか。戦後の飢えと物の不足。ロシアの人々は本当に辛抱強い。2017/08/10

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