人生と運命〈2〉

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 461p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622076575
  • NDC分類 983
  • Cコード C0097

出版社内容情報

従軍記者随一の人気を誇った作者が独ソ戦、絶滅収容所を再現。一瞬に人生の永遠が見えるチェーホフの短篇のような傑作長編。

内容説明

ウクライナの町から狩り出され、移送列車でユダヤ人絶滅収容所に到着した人々をガス室が待っている。生存者グループに選別されて列から離れる夫に結婚指輪とパンを手渡す妻。移送列車で出会った少年の母親がわりをするうちに、生き残る可能性を捨てて少年とガス室に向かった女性外科医―。赤軍記者として解放直後のトレブリンカ収容所を取材したグロスマンは、ナチ占領下ソヴィエトのホロコーストの実態を最も知る人間だった。国家と民族の栄光、一方は革命、他方は第三帝国の名のもとに、スターリニズムとナチズムが鏡像関係にあることを、グロスマンは見抜いていた。イデオロギーの力が死や拷問や収容所と結びつくとき、人々はモラルを失った。ナチの絶滅収容所ガス室施設長は、私が望んだのではない。運命が手をとって導いたのだと語った。普遍的な善の観念はイデオロギーとなって、大きな苦難をもたらす。恐怖と狂気の時代に、善意は無力だった。しかし、ささやかで個人的な、証人のいない善意は、無力だから力をもつ、それは盲目的な無言の愛であり、人間であることの意味である。20世紀の証言が、時空を超えて届く。グロスマンの生涯をかけた哲学的思考が文学に結晶した圧巻の第二部。

著者等紹介

グロスマン,ワシーリー[グロスマン,ワシーリー][Гроссман,Василий]
1905‐1964。ウクライナ・ベルディーチェフのユダヤ人家庭に生まれる。モスクワ大学で化学を専攻。炭鉱で化学技師として働いたのち、小説を発表。独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。43年、生まれ故郷の町で起きた独軍占領下のユダヤ人大虐殺により母を失う。44年、トレブリンカ絶滅収容所を取材、ホロコーストの実態を世界で最初に報道する。次第にナチとソ連の全体主義体制が本質において大差ないとの認識に達し、50年代後半から大作『人生と運命』を執筆、60年に完成。「雪どけ」期に刊行をめざすが、KGBの家宅捜索を受けて原稿は没収、死去

齋藤紘一[サイトウコウイチ]
1943年群馬県生まれ。東京大学理学部化学科卒。在学中に米川哲夫氏にロシア語を学ぶ。通産省入省後、課長・審議官を務める。93年退官後、ISO(国際標準化機構)日本代表委員、独立行政法人理事長等をへて現在、翻訳家。99年、通訳案内業免許(ロシア語)取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 2件/全2件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

199
第2部に入り、戦争の恐怖と狂気が加速する。独ソ戦と ユダヤ人虐殺が静かに進んでいくが.. ナチ親衛隊ヒムラー・アイヒマンの登場は不気味に怖い。だが それ以上に スターリンの独裁と 政敵への容赦ない殲滅には 息を呑む。密告が奨励され 同志を売る世界..科学者 ヴィクトルの苦悩、第6号棟第一号フラットでのグレーコフ、 生き残る可能性を捨てて ガス室に向かったソフィア..多くの人生が 転がりながら重厚に進んでいく..著者が命を懸けて現代に 伝えたかった想いが時代を超えて 読者の心に響く..そんな 第2部だった。2017/06/08

ケイ

144
自分の発言に常に注意を払わねばならないスターリン下のロシア。敵はドイツだけではない。ロシアの政治犯収容所とドイツの捕虜収容所。そしてユダヤ人収容所。流れる精神にいったい違いはあるのだろうか。そんな中でも起こる恋についての描写も、論理的に冷徹に書かれた反ユダヤ主義に対する考察も、ガス室での殺戮も、そしてスターリングラードの戦闘も、どこにも筆の劣るところがない。中でも、第六号棟第一号フラットの描かれ方には言葉もない。グレーコフのような人を、作者はスターリングラードにて確かに見たのだと思った。2016/12/27

NAO

71
加速するドイツのユダヤ人虐待。新築なった絶滅収容所のガス室で祝杯を挙げるドイツ将校の無神経さ、そして、そのあと描かれるその部屋に向かうユダヤ人の死の行進。作者が描き上げる対比の、なんというむごさ。そして、スターリンは、ナチのやり方を模倣するように、全体主義の強化と少数民族への虐待を強めていく。自分はユダヤ人であるがために自分の論文が認められないのだと思い悩むヴィクトルに救いはあるのか。2017/12/12

Willie the Wildcat

56
理論と実験の乖離。ヴィクトルの苦悩は、様々な世情を暗喩している気がする。払拭できない精神的な乖離。目的と手段も混沌とする「革命」という大義名分。善と是の解釈と体現が、愛や死生観という普遍の真理に挑む感。ソフィアとダヴィドの最期が、特に印象的。クリーモフが偵察時に遭遇したドイツ兵との”別れ”も同様。一方、ヴェーラが齎した新たな生命が、あたかも新しい時代の幕開けを示唆。最終巻が楽しみ!なお、蛇足ですがバッハ中尉の数える羊・・・、数ではなく白黒?!本当?2017/01/28

ヘラジカ

28
やはり圧倒的重厚感。とても一人の人間から作られた作品とは思えない。とにかく登場人物が多いのだが、中には一部につき1・2回しか舞台に立たない人も数多くいる。しかし驚くべきはその膨大な数の登場人物が、一人残らず物語の主役を担っていることである。さながら短編集の如く話は飛び飛びになるものの、脇役というものが殆どいない。全てが等しく重要なピースとして構築されているのだ。途轍もない巨大さと深淵さと併せ持った驚異の作品である。読み終えてしまうのが惜しい。第三部はまた時間を置いて読むとしよう。2016/01/13

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/4613204
  • ご注意事項

最近チェックした商品