フロム・ヘル〈下〉

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  • サイズ B5判/ページ数 1冊/高さ 26cm
  • 商品コード 9784622074922
  • NDC分類 726.1
  • Cコード C0079

出版社内容情報

上巻で丁寧に用意した数々の物語装置が殺人者の心理の最深部に肉迫するクライマックスへ、さらに濃密な事件の顛末へとなだれこむ下巻。物語を読み終わるすべての読者が、カタルシスを味わうだろう。
 ホワイトチャペル連続殺人の“史実”を偏執的なほどのストイックさでたどっているが、本作が再現を試みているのはむしろ、19世紀末ヴィクトリア朝の英国社会とその犠牲者たちの姿である。スラム街の娼婦から女王まで、すべての階層に充満する腐敗と不安の底に、革新と大量殺戮の20世紀が準備されている。その象徴として一つの事件を描きながら、歴史と神話の構造への畏怖と眩暈が表現される。
 巻末には補遺として、各ページの註解と、切り裂きジャックをめぐる言説をテーマにした短編が付録されている。作者のねらいや、本編の至るところに埋め込まれた仕掛け、隠し部屋のようなサイド・ストーリーを味わい尽くすためには補遺も必読。そこに再読、再再読の愉しみまで織り込まれている。全2巻

【下巻目次】
第九章 地獄より
第十章 この世で一番の仕立屋に
第十一章 不運なドルーイット氏
第十二章 リーズ氏の凶夢
第十三章 クリーヴランド・ストリートに還る
第十四章 ガル昇天す
エピローグ 海辺の老人たち
  
 ロンドン地図、およびホワイトチャペル地区拡大図
 補遺I 各章の註解
 補遺II カモメ捕りのダンス
 翻訳参考図書
 Murder, Myth & Magic(訳者解説)

【著訳者紹介】
作:アラン・ムーア(Alan Moore)
コミック原作者として本作『フロム・ヘル』や『ウォッチメン』など強烈な個性を放つ作品群を世に送り出し、多くのコミック作家や他分野のクリエイターたちに影響を与え続ける鬼才として知られる。彼の作品はコミックの枠を越えて高い評価を受けている。

画:エディ・キャンベル(Eddie Campbell)
ペン&インクによる独特の画風で知られる、スコットランド生まれのコミック作家。オーストラリア在住。

訳:柳下毅一郎(やなした・きいちろう)
英米文学翻訳家・映画評論家。訳書に、J・G・バラード『クラッシュ』(東京創元社)、ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』(国書刊行会)、ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』(河出書房新社)など。

内容説明

上巻で丁寧に用意した数々の物語装置が殺人者の心理の最深部に肉迫するクライマックスへ、さらに濃密な事件の顛末へとなだれこむ下巻。物語を読み終わるすべての読者が、カタルシスを味わうだろう。ホワイトチャペル連続殺人の“史実”を偏執的なほどのストイックさでたどっているが、本作が再現を試みているのはむしろ、ヴィクトリア朝末期の英国社会である。ホークスムアの建築とロンドンの街、フリーメイソン、君主制、階層間の極端な格差などの要素が組み込まれている。スラム街の娼婦から女王まで、すべての階層に充満する不安とパラノイアの底に、革新と大量殺戮の20世紀が準備されつつある時代。それらの要素の結節点として一つの殺人事件を描きながら、歴史と神話の構造への畏怖と眩暈が表現される。巻末には補遺として、各ページの註解と、切り裂きジャックをめぐる言説をテーマにした短編が付録されている。著者のねらいや、埋め込まれた仕掛け、サイド・ストーリーを味わい尽くすための手がかりが、この補遺にある。

著者等紹介

ムーア,アラン[ムーア,アラン][Moore,Alan]
1953年、イギリスのノーサンプトンに生まれる。コミック原作者として強烈な個性を放つ作品群を世に送り出し(四作品はハリウッドで映画化もされている)、多くのコミック作家や他分野のクリエイターたちに影響を与えている。『ウォッチメン』は1980年代のアメリカン・コミック/グラフィック・ノベルの記念碑的作品となり、ヒューゴー賞(コミック作品が受賞した初の例)を受賞するなど、コミックの枠を越えて高い評価を受けている

キャンベル,エディ[キャンベル,エディ][Campbell,Eddie]
1955年、スコットランド生まれのコミック作家。オーストラリア在住

柳下毅一郎[ヤナシタキイチロウ]
英米文学翻訳家・映画評論家。1963年生まれ。出版社勤務ののち、映画評論家に。多摩美術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Vakira

39
アメコミのグラフィックノベルの面白さを知る。吹き出しの文章は横書きで左から進む画はやはり日本と違う違和感であったが、原作者のアラン・ムーア、作画のエディ・キャンベルの技で今までにない読書?体験。上での始まりはなかなかストーリーに入りずらかったが、(登場人物の顔が類似して見える)ストーリーが判ってくると、アッと言う間に読み切ってしまった。19世紀ロンドンで起こった切り裂きジャックの話。実話らしい。その事件のムーア流解釈なのかもしれない。女性だけが殺害されていく。2016/07/29

かんやん

29
多くの人が切り裂きジャックに惹かれるのは、もちろん事件が未解決だから。100年以上も前の決して解かれることのないミステリーだからこそ、妄想の働く余地がたっぷりある。本編を読み終えた後の補遺は読んでも読んでも終わらないマニアックで偏執的なジャックフリークによる註記である。いやはや、いくらなんでも、そこまでは付き合えないよ、と思いつつ読み切った(そして、疲れた)。ジャック本の歴史はもはや迷宮である(捏造された日記まである)。著者も量子論とかフラクタルとか持ち出して、最後は比喩で語ってお茶をにごしてないですか?2020/07/01

内島菫

22
本書は最終ページを読み終わっても決して閉じられることのないあの「砂の本」と同類の本だ。切り裂きジャックという一連の連続殺人事件だけでなく、切り裂きジャックという事件にかかわり切り裂きジャックについて語り切り裂きジャック事件にとりつかれたすべての人々の織り成す何層もの一大叙事詩。本書では事件後だけでなく、事件発生前にまで時空の歪みが遡って及んでいると考えられている。同じ名前が別の事件にも出てくるという名前の引き合いは、自分の関心事を探求している人ならよく出会う現象である。2020/02/17

おーしつ

17
「きみは本当に見たことがあるのかね?本当の啓示を?ない?そうだろうな…だが、わしはあるぞ」 殺人を重ねる中で理性が崩れてていくガルが、最後の殺人において、「前兆→徘徊→求愛→儀式」のループから幻視により狂気に堕ちる第十章の迫力の凄まじさ。 そして彼が死ぬ間際に時空を越え未来の殺人者達に種を植えたという恐怖幻想。 膨大な資料から抽出した濃密な情報を紡ぎ創作部分で補い矛盾ない形で作品に昇華されたアラン・ムーア。恐るべし。 リッパロロジスト達の奔走をオマケマンガにするサービスっぷり。 カモメはまだ飛んでいる。 2010/12/16

hikarunoir

14
「再読しなければ意味を持たない書籍」という存在の重み。ある土地を訪れた際に、いくつかの極私的かつ、それぞれ無関係と思い込んでいたタイムスライスが、一本の針で貫かれたような名状し難い感覚に囚われたのが原因で、十年越しに再び手に取る。言語化の難しいあの針こそ、四次元の方向性と悟った。次元は土地に宿る。2020/06/04

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