出版社内容情報
上巻で丁寧に用意した数々の物語装置が殺人者の心理の最深部に肉迫するクライマックスへ、さらに濃密な事件の顛末へとなだれこむ下巻。物語を読み終わるすべての読者が、カタルシスを味わうだろう。
ホワイトチャペル連続殺人の“史実”を偏執的なほどのストイックさでたどっているが、本作が再現を試みているのはむしろ、19世紀末ヴィクトリア朝の英国社会とその犠牲者たちの姿である。スラム街の娼婦から女王まで、すべての階層に充満する腐敗と不安の底に、革新と大量殺戮の20世紀が準備されている。その象徴として一つの事件を描きながら、歴史と神話の構造への畏怖と眩暈が表現される。
巻末には補遺として、各ページの註解と、切り裂きジャックをめぐる言説をテーマにした短編が付録されている。作者のねらいや、本編の至るところに埋め込まれた仕掛け、隠し部屋のようなサイド・ストーリーを味わい尽くすためには補遺も必読。そこに再読、再再読の愉しみまで織り込まれている。全2巻
【下巻目次】
第九章 地獄より
第十章 この世で一番の仕立屋に
第十一章 不運なドルーイット氏
第十二章 リーズ氏の凶夢
第十三章 クリーヴランド・ストリートに還る
第十四章 ガル昇天す
エピローグ 海辺の老人たち
ロンドン地図、およびホワイトチャペル地区拡大図
補遺I 各章の註解
補遺II カモメ捕りのダンス
翻訳参考図書
Murder, Myth & Magic(訳者解説)
【著訳者紹介】
作:アラン・ムーア(Alan Moore)
コミック原作者として本作『フロム・ヘル』や『ウォッチメン』など強烈な個性を放つ作品群を世に送り出し、多くのコミック作家や他分野のクリエイターたちに影響を与え続ける鬼才として知られる。彼の作品はコミックの枠を越えて高い評価を受けている。
画:エディ・キャンベル(Eddie Campbell)
ペン&インクによる独特の画風で知られる、スコットランド生まれのコミック作家。オーストラリア在住。
訳:柳下毅一郎(やなした・きいちろう)
英米文学翻訳家・映画評論家。訳書に、J・G・バラード『クラッシュ』(東京創元社)、ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』(国書刊行会)、ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』(河出書房新社)など。
内容説明
上巻で丁寧に用意した数々の物語装置が殺人者の心理の最深部に肉迫するクライマックスへ、さらに濃密な事件の顛末へとなだれこむ下巻。物語を読み終わるすべての読者が、カタルシスを味わうだろう。ホワイトチャペル連続殺人の“史実”を偏執的なほどのストイックさでたどっているが、本作が再現を試みているのはむしろ、ヴィクトリア朝末期の英国社会である。ホークスムアの建築とロンドンの街、フリーメイソン、君主制、階層間の極端な格差などの要素が組み込まれている。スラム街の娼婦から女王まで、すべての階層に充満する不安とパラノイアの底に、革新と大量殺戮の20世紀が準備されつつある時代。それらの要素の結節点として一つの殺人事件を描きながら、歴史と神話の構造への畏怖と眩暈が表現される。巻末には補遺として、各ページの註解と、切り裂きジャックをめぐる言説をテーマにした短編が付録されている。著者のねらいや、埋め込まれた仕掛け、サイド・ストーリーを味わい尽くすための手がかりが、この補遺にある。
著者等紹介
ムーア,アラン[ムーア,アラン][Moore,Alan]
1953年、イギリスのノーサンプトンに生まれる。コミック原作者として強烈な個性を放つ作品群を世に送り出し(四作品はハリウッドで映画化もされている)、多くのコミック作家や他分野のクリエイターたちに影響を与えている。『ウォッチメン』は1980年代のアメリカン・コミック/グラフィック・ノベルの記念碑的作品となり、ヒューゴー賞(コミック作品が受賞した初の例)を受賞するなど、コミックの枠を越えて高い評価を受けている
キャンベル,エディ[キャンベル,エディ][Campbell,Eddie]
1955年、スコットランド生まれのコミック作家。オーストラリア在住
柳下毅一郎[ヤナシタキイチロウ]
英米文学翻訳家・映画評論家。1963年生まれ。出版社勤務ののち、映画評論家に。多摩美術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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