出版社内容情報
スキゾフレニアの臨床を中心に、実践から生み出された臨床の感触を克明に言語化し、そこに流れる時間を深く考察する。
内容説明
日々の臨床の営みを真摯にみつめ、途絶し、弛緩し、収縮する生きた時間の経験をあらわにする、精神科医の思考の軌跡。
目次
1 精神科臨床の場所(途絶と沈黙の精神病理;記述とは何か;顔は倫理である;イロニーとユーモア;精神発達遅滞と身体)
2 精神科臨床の時間(精神科臨床と時間;子供時代という時間;時間の生態;失調する時間;時間に臨む/臨・時間)
著者等紹介
杉林稔[スギバヤシミノル]
1962年生まれ。愛仁会高槻病院精神神経科医長。1988年京都府立医科大学医学部卒業、同年神戸大学医学部精神神経科教室に入局。兵庫県立光風病院、関西青少年サナトリューム、神戸大学医学部付属病院精神科勤務を経て、1996年より現職。専攻は臨床精神医学、精神病理学、総合病院精神医学、病跡学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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日曜読書人
8
「精神科臨床の○○」シリーズ第一弾。端正な論文が並んでいて好感。2018/09/16
anchic
5
学生時代にこの手の本を読んでもあまりピンと来なかったのだが、現場で日々少年との対話をしている今読んでみると、共感できる部分がとても多く、参考になる印象が強い。自分もやっと臨床家として歩き始めているのだなあと思わせてくれる良著だと思います。思えば現場に入りたての頃、何もかもがうまくいかず、神田橋條治の著作を貪り読んだ頃があった。2013/05/18
fonfon
5
この本を読んでまず思うことは、なにかとても美しいものに触れた、という感覚です。私には真夜中に「おやすみ」と初めてことばを発した青年や、喧噪の病棟で放心し座り込んでいる女性がみえます。「底なしの時間をあやす」という言葉も強く刻まれました。「このからだそらのみじんにちらばれ」と、泣きやまない子どもを抱いて過ごした底なしの時間、を今年の春再び経験してしまいましたが、この本を読んで、リセットできないと思いこんでいた時間を巻き戻し再スタートできるかもしれない、とほの明るい気持ちになれました。感謝。2010/12/12