内容説明
ウィトゲンシュタインは、“意味”の本質の探究を主要課題とすることによって、現代の哲学に革命をもたらした。著者エイヤー自身もまた、ウィトゲンシュタインから深く影響を受けた古典的著作『言語・真理・論理』で、この革命に独自の寄与をなした。本書はそのエイヤーによる『論考』から『探究』にいたるウィトゲンシュタイン哲学の再構築である。
目次
1 序奏―ウィトゲンシュタインの生涯
2 『論考』
3 移行期
4 『茶色本』
5 数学の基礎
6 『哲学探究』
7 呪術と宗教について
8 心理学の哲学
9 知識と確実性
10 ウィトゲンシュタインの影響
著者等紹介
エイヤー,A.J.[エイヤー,A.J.][Ayer,Alfred Jules]
1910‐1989。1910年ロンドンに生れる。1932年オックスフォード大学クライスト・チャーチ・カレッジ卒後、ウィーンに留学。ラッセル、ウィトゲンシュタインの影響の下に『言語・真理・論理』(1936、邦訳、岩波書店)を著し、イギリスにおける論理実証主義の唱道者となる。第2次大戦で軍務に服した後、1946‐59年ロンドン大学教授、1959‐78年オックスフォード大学教授。1952年以来、英国学士院会員
信原幸弘[ノブハラユキヒロ]
1954年兵庫県に生まれる。1977年東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
63
ウィトゲンシュタインを批判的に取りあげ再構築する試み。語り得ぬことを語り得ぬと言いつつなお語ろうとしたウィトゲンシュタインは、暗示的な断章を書き連ねた。それに対して本書は、個々の命題に現実の色をつけ直すことにより、それらが帯びる違和感を強調しているように見える。難解だが、生身のウィトゲンシュタインが目の前にいるような臨場感がある。決して本人が望まない、想像だにしなかったろう哲学的肖像が生き生きと描かれる一方で、著者が指摘する矛盾こそウィトゲンシュタインのめざした所ではないかと、別の読み方もしてみたくなる。2017/06/09
木村すらいむ
2
きっかけがあり Wittgenstein を自分の頭の中に印象づけたかったので,彼に関する本を読んでみた.著者の Ayer は,彼の知人でありながら,彼の考えを批判的に考察している.その点が良かった.彼に関連する同時代の人として, Russell, Moore, Frege, Hume, Wien 学団などがいることがわかった.彼を象徴すると感じた哲学観を引用する. P.111-112 ”哲学の本分は,哲学者がとくにかれらの言葉の働き方の誤解を通じて陥りがちな誤謬を明らかにすることにある.”2014/04/12