出版社内容情報
「モンテーニュは古遺物研究を利用して早咲きの植民地主義批判を提出した。そして、ピカソは古典古代の形像を利用して、植民地主義がつくりだした諸条件のもとで、非ヨーロッパ地域の具象文明をわがものにしようとしたのである。二人とも、伝統を、それを生産した者の意図とそれをそれまで利用してきた者の意図に逆らって利用した。ある意味では、二人とも、伝統を逆なでに読んだのであった。」(「序言」より)
中世の異端裁判記録を丹念に読みこんでミクロストリアを実践し、歴史叙述の理論(メタヒストリー)においても論争をリードする、現代歴史学の泰斗ギンズブルグの、日本語版独自編集による最新論集。歴史とフィクション、証拠、他者認識をめぐり、ベンヤミンの「歴史哲学テーゼ」に触発された「史料を逆なでに読む」方法によって、実証主義にも懐疑論にも与さない新たな歴史研究の可能性を指し示す。
歴史的な事象は、真実へともたらしうるか。歴史叙述と、裁判記録、民族誌、伝記、リアリズム小説との類似点と相違点とは。証拠や証言、古遺物、さらには異質な文化との対話をとおして、過去の「現実」と「可能性」を統合する"逆なで"的な読みとは何か。古典古代から現代におよぶ瞠目すべき博識と、所与の現実に批判的な距離をとる方法論的省察によって、今日の歴史研究の核心に触れる。
Carlo Ginzburg(カルロ・ギンズブルグ)
歴史家。1939年イタリアのトリーノに生まれる。ピサ高等師範学校専修課程修了。長らくボローニャ大学で近世史講座の教授職にあったのち、現在はカリフォルニア大学ロスアンジェルス校で教えている。邦訳のある主要著書:杉山光信訳『チーズとうじ虫――16世紀の一粉挽屋の世界像』(みすず書房、1984[原著1976])、上村忠男訳『夜の合戦――16-17世紀の魔術と農耕信仰』(みすず書房、1986[1966])、竹山博英訳『神話・寓意・徴候』(せりか書房、1988[1986])、竹山博英訳『闇の歴史――サバトの解読』(せりか書房、1992[1989])、上村忠男・堤康徳訳『裁判官と歴史家』(平凡社、1992[1991])、森尾総夫訳『ピエロ・デッラ・フランチェスカの謎』(みすず書房、1998[1994])、上村忠男訳『歴史・レトリック・立証』(みすず書房、2001)。
上村忠男(うえむら・ただお)
1941年兵庫県尼崎市に生まれる。1968年東京大学大学院社会学研究科(国際関係論)修士課程修了。現在、東京外国語大学大学院地域文化研究科教授。学問論・思想史専攻。著書:『ヴィーコの懐疑』(みすず書房、1988)、『クリオの手鏡――20世紀イタリアの思想家たち』(平凡社、1989)、『歴史家と母たち――カルロ・ギンズブルグ論』(未來社、1994)、『ヘテロトピアの思考』(未來社、1996)、『バロック人ヴィーコ』(みすず書房、1998)、『歴史的理性の批判のために』(岩波書店、2002)、『超越と横断――言説のヘテロトピアヘ』(未來社、2002)ほか。訳書:ギンズブルグの上記3訳書のほか、G.B.ヴィーコ『学問の方法』(共訳、岩波文庫、1987)、同『イタリア人の太古の知恵』(法政大学出版局、1988)、B.クローチェ『思考としての歴史と行動としての歴史』(未來社、1988)、G.C.スピヴァク『サバルタンは語ることができるか』(みすず書房、1998)、同『ポストコロニアル理性批判』(共訳、月曜社、2003)、A.グラムシ『知識人と権力』(みすず書房、1999)など多数。
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ギンズブルグの本:
ギンズブルグ『チーズとうじ虫』
ギンズブルグ『夜の合戦』
ギンズブルグ『ピエロ・デッラ・フランチェスカの謎』
ギンズブルグ『歴史・レトリック・立証』
内容説明
現代歴史学の第一人者による日本版ベストセレクション。史料が語る証拠や証言にもとづきながら、歴史の真実と可能性を統合する歴史叙述はいかにして可能か。
目次
第1章 証拠と可能性
第2章 展示と引用―歴史の真実性
第3章 証拠をチェックする―裁判官と歴史家
第4章 一人だけの証人―ユダヤ人大量虐殺と現実原則
第5章 人類学者としての異端裁判官
第6章 モンテーニュ、人食い人種、洞窟
第7章 エグゾティズムを超えて―ピカソとヴァールブルク
結びに代えて―自伝的回顧
著者等紹介
ギンズブルグ,カルロ[ギンズブルグ,カルロ][Ginzburg,Carlo]
歴史家。1939年イタリアのトリーノに生まれる。ピサ高等師範学校専修課程修了。長らくボローニャ大学で近世史講座の教授職にあったのち、現在はカリフォルニア大学ロスアンジェルス校で教えている
上村忠男[ウエムラタダオ]
1941年兵庫県尼崎市に生まれる。1968年東京大学大学院社会学研究科(国際関係論)修士課程修了。現在東京外国語大学大学院地域文化研究科教授。学問論・思想史専攻
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