イスラム報道 (増補版)

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  • サイズ B6判/ページ数 222,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622070320
  • NDC分類 302.26
  • Cコード C1030

出版社内容情報

「私は、ムスリムがイスラームの名によってイスラエル人や西洋人を攻撃したり傷つけたりしたことがない、などと言っているのではない。私が語っているのは、人がイスラームについてメディアを通して読んだり見たりすることのほとんどが、侵略行為はイスラームに由来するものであり、なぜなら〈イスラーム〉とはそういうものだからだと表象されている、ということである。その結果、現地の具体的なさまざまな状況は忘却される。言い換えれば、イスラームについて報道するということは、〈我々〉が何をしているかを曖昧にする一方で、このように欠陥だらけのムスリムやアラブ人とは何者であるかに脚光を当てる一面的な活動なのである」

『オリエンタリズム』の著者が、西洋(=アメリカ)のメディアに現れるフィクションとしての「イスラム」を描き、アクチュアルな問題を本書を通して世に問うたのは、1981年のことだった。そして現在、この傾向はますます振幅をきわめ、CNNを中心に放映されるイスラムの映像は、無批判のかたちで日本のテレビでも流され、あご髭のムスリム=テロリストという表象は、われわれの脳裏に刻まれている。

本書は、原著刊行16年後に出た新版に著者が寄せた50頁を超える序文を加えた増補版である。『戦争とプロパガンダ』シリーズともども、現代世界を考えるための必読書になるだろう。


Edward W. Said(E・W・サイード)
1935年11月1日、イギリス委任統治下のエルサレムに生まれる。カイロのヴィクトリア・カレッジ等で教育を受けたあと合衆国に渡り、プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。現在 コロンビア大学英文学・比較文化教授。邦訳されている著書に『オリエンタリズム』(平凡社、1986)『始まりの現象』(法政大学出版局、1992)『知識人とは何か』(平凡社、1995)『世界・テキスト・批評家』(法政大学出版局、1995)『パレスチナとは何か』(岩波書店、1995)『音楽のエラボレーション』(みすず書房、1995)『文化と帝国主義』(全2巻、みすず書房、1998、2001)『遠い場所の記憶 自伝』(みすず書房、2001)『戦争とプロパガンダ 1・2』『イスラエル、イラク、アメリカ――戦争とプロパガンダ3』(みすず書房、2002、2003)などがある。

訳者:
浅井信雄(あさい・のぶお)
1935年長岡市に生まれる。東京外国語大学卒。読売新聞社入社、ジャカルタ、ニューデリー、カイロ各駐在特派員、ワシントン支局長を歴任。米国ジョージタウン大学客員研究員、東京大学、東京外国語大学各講師、中東調査会理事などを経て、1987年より1998年まで神戸市外国語大学国際関係学科教授。著書は『中東を動かすものは何か』(1988)『ミステリーと虚構の国際政治』(1992)『アメリカ50州を読む地図』(1998)『アジア情勢を読む地図』(2001)『最新版・民族世界地図』(2002)ほか。

佐藤成文(さとう・しげふみ)
1940年東京に生まれる。早稲田大学卒。時事通信社入社。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン各駐在特派員、本社外信部次長、ニューヨーク、ワシントン各支局長を経て、1993年よりロサンゼルス支局長。1997年退職。現在ロサンゼルス在住のフリーランスのジャーナリスト。

岡真理(おか・まり)
1960年東京に生まれる。東京外国語大学大学院修士課程修了.現代アラブ文学専攻.エジプト・カイロ大学留学。在モロッコ日本国大使館専門調査員、大阪女子大学人文社会学部講師などを経て、2001年より京都大学総合人間学部助教授。著書は『記憶/物語』(2000)『彼女の「正しい」名前とは何か』(2000)ほか。


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E・W・サイードの本
『戦争とプロパガンダ』
『戦争とプロパガンダ 2――パレスチナは、いま』
『イスラエル、イラク、アメリカ ――戦争とプロパガンダ 3』
『文化と帝国主義 1』
『文化と帝国主義 2』
『遠い場所の記憶 自伝』

内容説明

あご髭のムスリム=テロリスト。アメリカはイスラムをいかに表象してきたか。メディアに現われるフィクションとしてのイスラムのあり方を問う、現代の古典。

目次

第1章 ニュースとしてのイスラム(イスラムと西洋世界;解釈の社会集団;「王女」エピソードの背景)
第2章 イラン報道(聖なる戦い;イラン喪失;未検証の隠された仮説;もうひとつの別の国)
第3章 知識と権力(イスラム解釈の政治学:正統的知識とアンチテーゼ的知識;知識と解釈)

著者等紹介

サイード,エドワード・W.[サイード,エドワードW.][Said,Edward W.]
1935年11月1日、イギリス委任統治下のエルサレムに生まれる。カイロのヴィクトリア・カレッジ等で教育を受けたあと合衆国に渡り、プリンストン大学、ハーヴァード大学で学位を取得。現在、コロンビア大学英文学・比較文化教授

浅井信雄[アサイノブオ]
1935年長岡市に生まれる。東京外国語大学卒。読売新聞社入社。ジャカルタ、ニューデリー、カイロ各駐在特派員、ワシントン支局長を歴任。米国ジョージタウン大学客員研究員、東京大学、東京外国語大学各講師、中東調査会理事などを経て、1987年より1998年まで神戸市外国語大学国際関係学科教授

佐藤成文[サトウシゲフミ]
1940年東京に生まれる。早稲田大学卒。時事通信社入社。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン各駐在特派員、本社外信部次長、ニューヨーク、ワシントン各支局長を経て、1993年よりロサンゼルス支局長。1997年退職。現在ロサンゼルス在住のフリーランスのジャーナリスト

岡真理[オカマリ]
1960年東京に生まれる。東京外国語大学大学院修士課程修了。現代アラブ文学専攻。エジプト・カイロ大学留学。在モロッコ日本国大使館専門調査員、大阪女子大学人文社会学部講師などを経て、2001年より京都大学総合人間学部助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mintia

6
とても難解だった。イスラムに対する報道はアメリカ経由でしか情報が入っていないので、かなり偏向していると思う。2021/02/03

ちゅん

4
(1/2)本書を深く理解する上で大事な考えがあります。 サイードの別著「オリエンタリズム」にある オリエンタリズムという考え方です。 誤解を恐れずにその意味をまとめると、 「西洋人が西洋以外のもの(物・者)に向ける優越感」 …ということになるでしょうか。 19世紀、20世紀、いや現代ですら残っているかもしれません 西洋諸国がそれ以外の国に対する優越感です。 ただ、これは西洋に限らず、 東南アジアでも先進国が後進国に向ける優越感というものは あるかもしれません。 これは一種のオリエンタリズムなのです。2018/11/20

hiroe

3
正直言っていることは、同じことの繰り返しだなあと思うのですが、それでも対立軸を明確にしすぎて、本当はグラデーションのものを赤と白に分けてしまう報道のやり方の怖さというのは、よくわかる。世界が狭くなった気になっていても、実はやっぱり広い。日本の中でさえ、地方によってこれだけの違いがあるのに、ましてや遠い異国の風俗や習慣を、自分が読める言語で書かれたある人の解釈を読んだだけで知った気になるのは、危険だということなのだろう。逆に「世界が狭くなった」感覚だけが広がったことが弊害に繋がってるという可能性も。2010/03/29

あきさ

1
「一つのイスラム」を「フィクション」と断じ、アメリカで度々報じられてきた「正義のアメリカ」と「悪のイスラム」の物語はヨーロッパでも日本でも再生産され続けている。この本とは直接関係ないが、自分の中で「アラブ」と「イスラム」の区別がつくようになったのはエポックメイキングなことだった。途中から速読でざっくりと。2016/01/18

hobby no book

1
久々のサイード。タイトルからも察せられるけれど、割と焦点が狭いというか、色々な素材を用いて一つのことを表現している。序文に関しては、個人に対して舌鋒を向けている部分が長くて、個人的にはこういうサイードの筆致はあまり好きではないのでやや微妙だった。あと表示されている書誌データは序文の頁数が含まれていないようで、実際には序文が56頁あるので、総頁数は290くらいになるはず。2015/02/25

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