出版社内容情報
グラフィックデザインの第一人者として広く知られる著者、鈴木一誌。彼はまた、永きにわたって、映画、写真をはじめとする<映像>に強い関心を抱き、思索を深めてきた。本書は、「線と面」のタイトルで、「みすず」誌に長期連載した映像論を集成した、待望の書である。
北野武『HANA-BI』から驚くべきドキュメンタリスト、フレデリック・ワイズマンへ、あるいはゴダール畢生の大作『映画史』からレヴィ=ストロースの写真集が孕む謎へ。著者のずば抜けた感性が捉えた、映像=画面そのものの刺激的な分析を通して、観客としての我々の死角を鋭く衝く、斬新な思考が展開する。
「ワイズマン映画の見られるまま聞かれるままの映像と音に向かい合うとき、観客は写っているもののおもしろさと、写ってあることのおもしろさの、ふたつの世界を受け取る。観客の視線は、そのふたつのおもしろさをめまぐるしく往還している」。
連載時より密かに、しかし何よりも熱い注目を集めてきた、文字通り<待たれていた>批評家、初の評論集の誕生。満を持しての登場は、この秋、話題必至の事件とさえ言えよう。
鈴木一誌(すずき・ひとし)
1950年、東京都立川市生まれ。東京学芸大学、東京造形大学ともに中退。グラフィックデザイナー杉浦康平のもとで12年間アシスタントをつとめ、85年、独立。本文ページのレイアウト・フォーマットをめぐって朝日新聞社とのあいだで争われた「知恵蔵裁判」を93年に提訴し、99年に高裁で敗訴。81年、映画批評で第1回ダゲレオ出版評論賞。98年、講談社出版文化賞ブックデザイン賞。デザインのおもな仕事に『昭和――二万日の全記録』、『Japan An Illustrated Encyclopedia――英文日本大事典』、『クロニック世界全史』、『大辞泉』、『鈴木清順全映画』、『小川紳介 映画を獲る』、『加藤泰作品集』ほか多数。著述に「ページネーションのための基本マニュアル」「明解日本語文字組版」(共著、99年、『印刷ガイドブック――DTP実践編』玄光社、所収)、『知恵蔵裁判全記録』(共著、01年、太田出版)がある。デザイン論『ページと力 手わざ、そしてデジタル・デザイン』(青土社)が近刊予定。
内容説明
北野武、レヴィ=ストロース、ワイズマン、そしてゴダール。待たれていた映像批評界最大最強の新人の言葉が、ついに一冊の本として結実した。
目次
遠くへ―侯孝賢『戯夢人生』
砂に還る―神代辰巳『インモラル・淫らな関係』
透過体―ジャン=リュック・ゴダール『映画史』
プリズムとしての人類学者―クロード・レヴィ=ストロース『ブラジルへの郷愁』
見えない器―リュミエールと『攻殻機動隊』
半顔の戦争―安彦良和『虹色のトロツキー』
密度の旅―北野武『HANA‐BI』
運命の小片―土本典昭『医学としての水俣病』
光の底―フレデリック・ワイズマン論
非対称を渉る―フレデリック・ワイズマン論補足
著者等紹介
鈴木一誌[スズキヒトシ]
1950年東京都立川市生まれ。東京学芸大学、東京造形大学ともに中退。グラフィックデザイナー杉浦康平のもとで12年間アシスタントをつとめ、1985年、本文をふくめた書物全体の拵え=ブックデザインを目ざし、独立。本文ページのレイアウト・フォーマットをめぐって朝日新聞社とのあいだで争われた「知恵蔵裁判」を1993年に提訴し、99年に高裁で敗訴。81年、映画批評で第一回ダゲレオ出版評論賞。98年、講談社出版文化賞ブックデザイン賞
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