lettres
消去〈上〉

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  • サイズ B6判/ページ数 224p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622048695
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

出版社内容情報


全2巻

シリーズ lettres

内容説明

オーストリアの作家トーマス・ベルンハルト(1931‐1989)の代表的長編小説をここに刊行。主人公フランツ‐ヨーゼフ・ムーラウが両親と兄の死を告げる電報を受け取るローマの章「電報」と、主人公が葬儀のために訪れる故郷ヴォルフスエックを描く章「遺書」からなる本書は、反復と間接話法を多用した独特の文体で、読者を圧倒する。ベケットの再来、20世紀のショーペンハウアー、文学界のグレン・グールド。挙げ句には、カフカやムジールと肩を並べる20世紀ドイツ語圏の最重要作家と評価されるベルンハルトとは、いったい誰なのか。

著者等紹介

ベルンハルト,トーマス[ベルンハルト,トーマス][Bernhard,Thomas]
1931‐1989。オランダのマーストリヒト近傍に生まれる。1957年に詩集『地上にて地獄にて』でデビュー、その後小説『霜』(1963)『石灰工場』(1970、邦訳あり)、自伝的作品5冊『理由』(1975)『地下室』(1976)『呼吸』(1978)『寒さ』(1981)『子供』(1982)などを発表し、独特の作風を確立する。戯曲家としても『しばい屋』(1985)『リッチー、デーネ、フォス』(1986)『ヘルデンプラッツ』(1988)など多数の作品がある。他に邦訳がある小説は『ヴィトゲンシュタインの甥』(1982)『滅びゆく者』(1983)。1970年にビューヒナー賞を受賞。20世紀のオーストリア文学のみならず世界文学を代表する作家・劇作家である

池田信雄[イケダノブオ]
1947年東京に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科教授。ドイツ文学・異文化コミュニケーション論。『ノヴァーリス全集』(全3巻、共訳、沖積舎、2001)など多数の翻訳書のほか、数多くの映画字幕(『ベルリン天使の詩』共訳、等)の翻訳がある。ドイツ語圏の文学紹介誌DeLiの編集長をつとめる
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

103
不思議な作品。ドイツやオーストリアを嫌い、ローマに住む主人公。両親と兄の死を知らせる電報を受け取り、帰国することにする。そこから彼の回想が始まる。段落や改行がないのに半分読んでやっと気づいた。さらに、一つの事を話すときに、その言葉を何度も繰り返すことにも。例えば102頁の最初の5行において、カトリックという単語を七回も使う。全てがこういった具合。話されるのは、家族と故郷への嫌悪。いかに自分が冷遇されているか。ネガティブな描写が延々と続く。「~と、私はガンベッティに言った」も繰り返す。ガンベッティの受難…。2016/07/22

扉のこちら側

70
初読。2015年1020冊め。【49-1/G1000】読み始めてすぐに邦訳に戸惑ったが、検索すると原文でもこういう仕様らしいのでそのまま読了。タイトルは自分自身を消していくということで、語り手の男が自分の過去、とりわけ家族と故郷へあらゆる呪詛を吐き散らす物語。…身も蓋もない表現だ。「ドイツ語の単語はまるで鉛のおもりみたいにドイツ語にぶらさがっていて、いつだって精神のいちばんの急所を圧さえつける。ドイツ語はどんな考えも、そもそもそれが表現される前に圧しつぶしてしまう」…ああ、実によくわかる。 続 2015/08/26

NAO

62
両親から疎んじられ、故郷を離れてローマに一人住む孤独な学者。彼は、生に絶望し、故国であるオーストリアを否定している。彼は隠遁生活を続けながらドイツ文学の研究を続けているが、その仕事は実を結ばない不毛の努力のようである。その彼のもとに両親と兄が交通事故で亡くなったという電報が届き、主人公は家族の死から喚起される故郷への思いをひたすらモノローグで語り続ける。段落も改行もなく、何度もしつこいぐらいに同じ言葉が繰り返される家族への故郷への呪詛は、下巻で昇華されるのだろうか。2016/11/13

syaori

55
「私」に届けられた一通の電報。父母と兄の死を告げるそれが、彼に父を母、兄妹、故郷の記憶を蘇らせます。「私」の「精神的な生き方」を認めない「愚かな」家族、「家に経済的な利をもたらすものだけが」評価される空気、「私」を罵ってばかりだった父母、嘲った兄妹。「ずっと愛してきたが」「呪いつづけて」もきた彼ら。その思いは家族の政治信条とも絡んでオーストリアという国家への呪詛へと繋がっていくよう。自分の見た故郷の「すべてを消去するために書く」と彼は言う、「新しいものを呼び寄せるために」。その思いは成就するのか、下巻へ。2020/05/06

zirou1984

51
あのアゴタ・クリストフが「偉大な作家」と呼びそのユーモアへの賞賛を惜しまないオーストラリアの出身の作家、トーマス・ベルンハルトの代表作。ユーモアと言ってもそれは東欧特有の笑うに笑えない黒いユーモアであり、本作では故郷への嫌悪と家族への怨嗟が強迫観念を具現化したかのように改行も挟まず繰り返し繰り返し語られる。家族の死を契機に溢れ出る呪詛は己の矮小さの裏返しであると同時に、割り切れぬ不条理に対する足搔きでもある。下へ下へと落ちていく負の重力に抗えぬ身を嘲笑う、これもまた語ることの快楽の一つのあり方。2015/01/31

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