出版社内容情報
「紙というものが手に触れる感じ、白い紙の上に黒い文字が乗っている視覚的印象、本の重さ、紙が放つ匂いなど、つまり本というものの質感は読書体験にとってずいぶん大事だ。本の話というといつも内容を理解して自分のものにすることが重視される。それはもちろん当然のことなのだが、その一方でモノとしての本が五感に与える快楽はなかなか無視できない。手の上に乗る大きさでありながら、宇宙全体を中に秘めうる魔法のからくり。その具体的形態としての束ねられた紙……本当に楽しんで読みたい時にブラウン管に映る文字を目で追って『パルムの僧院』を読みとおすというのは、やっぱり楽しくないだろう。」(本の質感)
藤沢周平やジョン・ル・カレ、読んでいない必読書、さらにブローティガン、ゲバラ日記など、読書の醍醐味を開示するコラム76篇を収めた待望の第二集。また本書の圧巻はなによりも、クンデラの『存在の耐えられない軽さ』の文学世界を詳細に分析した一文であろう。これは現代のヤワな批評の中にあって、もっとも良質な書評=評論の見本である。
池澤夏樹(いけざわ・なつき)
1945年北海道帯広市に生まれる。埼玉大学理工学部中退。1975年から3年間ギリシアに滞在。1987年『スティル・ライフ』で中央公論新人賞及び第98回芥川賞を受賞。詩、小説、評論、翻訳。主な著書は長篇小説として『夏の朝の成層圏』、『スティル・ライフ』、『真昼のプリニウス』(以上中央公論社)、『バビロンに行きて歌え』、『タマリンドの木』(文藝春秋)、『南の島のティオ』(楡出版)、『マシアス・ギリの失脚』(新潮社)、短篇集として『マリコ/マリキータ』『骨は珊瑚、眼は真珠』(文藝春秋)。詩集に『塩の道』、『最も長い河に関する省察』『池澤夏樹詩集成』(共に書肆山田)。エッセー、評論として『見えない博物館』(小沢書店)、『ブッキッシュな世界像』(白水社)、『ギリシアの誘惑』(書肆山田)、『インパラは転ばない』(光文社)、『都市の書物』(太田出版)、『シネ・シティー鳥瞰図』(中公文庫)、『南鳥島特別航路』(日本交通公社出版局)、『エデンを遠く離れて』(朝日新聞社)、『読書癖』全4巻(みすず書房)、『母なる自然のおっぱい』(新潮社)、『海図と航海日誌』(スイッチ・パブリッシング)、『楽しい終末』(文春文庫)、『むくどり通信』『むくどりは飛んでゆく』『むくどりの巣ごもり』『むくどりしゃっきん鳥』(朝日新聞社)、『小説の羅針盤』『ハワイイ紀行』『明るい旅情』(新潮社)、『クジラが見る夢』(新潮文庫)、『未来圏からの風』『やさしいオキナワ』(PARCO)、『沖縄式風力発言』(ボーダーインク)、対論『沖縄からはじまる』(共著、集英社)など。
内容説明
宮沢賢治、ジョン・ル・カレから読んでいない必読書、ゲバラ日記まで、読書の醍醐味を示す、本好きによる本好きのためのブリリアントなエッセー=書評82篇。
目次
謎のニサツタイ
旅先で地名に出会う
鎧の中はからっぽ
言葉のない絵本
「世界ロマン文庫」の一冊
いなくなった作家
山のユーモア
時代から遅れるということ
いちばん高級な文庫
もう一つの「東洋文庫」
学者の翻訳
増殖する細部
人とモノの動きを見る史観
科学の現場から
『西洋思想大事典』書評事典の試み
一つの私的な読みとして
クンデラ小論 あるいは『存在の耐えられない軽さ』の重さ〔ほか〕
感想・レビュー
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