感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
9
おい、嘘だと言ってくれ、もしかしてバルト大先生はSARRAS(ine)が回文であることに気がついていない・・・???あんなに記号に敏感なバルト先生が!?逐文的に読んでいるのに!?それに気がつかないとサラジーヌのタイトルすら分かってないことになるのだが!???? ・・・というわけで、後年ミシェル・セールの『両性具有-サラジーヌについて』が申し訳なさそうにその辺を補足してくれるわけですね。先生ドンマイ。2021/09/09
NICK
6
ロラン・バルトによるバルザックの中編小説の精読/再読。『物語の構造分析序説』では物語論的な簡潔な機能分析に留まっていたが、この『S/Z』は『サラジーヌ』を構成している全文をことこまかに、それこそ記号として機能している最小の単位にまで分解して読み込んでいる。膨大な記号のあらわれに頭がクラクラしてくるが、「物語の利益」(ディスクールが物語を強制させる)であるとか「逆コミュニケーション」というあたりは気になった。あんまり汲み取れなかった感でいっぱいなので次はノート取りながら「再読」したい2012/01/07
たっきー
1
これはすごい研究書であす。何がすごいかと言えばロラン・バルとの作品分析にかけた労力がすごいです。ひたすらカード作りをしたわけで。で、何が明らかになったかと言うと、徒労に近いと分かった点がまたすごいですね。僕もカード作りをしたことがありますが、労力の割に得るものがないように思いました。他人に認めてもらうには、やはり他の作品とも比較し、対象がどれほど優れた表現をしているのかを明らかにしなければならないでしょう。でも、文学の意義を語れる人がいない昨今、このような地道な作業も必要かもしれないですね。2006/01/01
ハイザワ
1
古典テクストである『サラジーヌ』への批評を通じて、新しい小説のありかた(ヌーヴォーロマン)が予告されている。固有名詞は、「名詞として」テクスト内に現れることで、さまざまな性格、意味の総和であるかのように振る舞うことができる。そして、小説内の出来事は、あらかじめ経験されたものしか書かれることができない。自分ないし社会の中で類型化されたものが小説に回帰するということである。これらのありふれたコードを乗り越えるところに小説の可能性がある。2017/01/05