出版社内容情報
ラカン、ニーチェなど、さまざまなテクストを引用しつつ複雑微妙な恋愛の諸相をみごとに照射。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
19
正直に言えば私の無学故に分からなかった場所も多いが、飛ばし読みするとぼんやりと恋する男の悲しい「ディスクール」が浮かび上がって来て、愛おしく感じられた。こちらは恋に落ちている。だけども彼は相手にされない、その苦しみ……断章形式で綴られるので思考はそんなに広がらず、とっ散らかってワケが分からない。ただ、その思考の運びのスリルはこちらにも伝わって来て、ゲーテやプルーストを読んでみたくさせられる。決して閉じた本ではない。そこがこの書物の凄味であり、今なお読むに耐え得る強度を孕んでいるのだろう……と考えさせられる2018/04/02
三柴ゆよし
19
クズの教科書・恋愛篇。他に労働篇、家族篇などいくつかリスト化しているが、そのどれにも劣らぬ破壊力を秘めた本であり、最終的には読んだ記憶を抹消しようかとまで思いつめた。本書を読む姿勢は大別するとふたつある。まずひとつはニヤニヤしながら読む。クリーン乃至赤錆びだらけの人がこれである。もうひとつは輾転反側して奇声を発し家人の冷たいまなざしを感じながら読む。いままさに懊悩する人がこれである。無論、私は後者である。そして同じく後者に属するあなたを最大限のやさしさを以て理解することができる。来たれ!恋愛ゾンビたち!!2015/03/26
きいち
11
Xとの関係はどうなって行くんだ?これは同性愛?…と、気がつくと、断片がテーマごとにアルファベット順に並べられている中を無理にでも物語を読み取ろうとあがいてしまっている自分がいる。バルトが物語から自由になろうと恋愛というネタを選びこの形をとってくれているにもかかわらず。それだけ今の自分が恋愛の当事者と遠いところにいるのかもしれん。そう考えると寂しいことだな。2013/03/22
あなた
11
最近、再読して思ったんだがこれって想像界と現実界の折衝を主題にした恋愛論なのだから、ネット社会の恋愛論なのである。別にバルトはネット社会に向けて書いたわけではないが、ネット社会がバルトに向けてネット恋愛を行っているのである。いや、もしかしたらネット社会とラカンの三層構造が非常に似通っているのかもしれない。ともかく、俺のバルトいちおしの本で、実践するためにある記号論。告っては読み、泣いては読み、同棲しては読み、セックスしては読み、別れては読み、泣きながら読み・・・2009/07/20
サンノート
10
恋愛に関した色々な場面を取り上げる。よくここまで分類したなと感心したけど、なにか場面場面の対処法が載っているというわけでもない。恋愛指南書と呼んでいいものかどうか。恋愛における一般化したシチュエーション集とでも言おうか。これを読んだところで恋愛マスター()になれるというわけではないと思う(そういう方もいらっしゃるかもしれないが)。自分のケースと照らし合わせて、そうそう、そうなんだよねえ、と同意しながら頷きながら読むのがひとつの読み方ではないだろうか。2015/11/15