内容説明
文学の中に現れる空間、すなわち人の心に映じた都市や建物は言葉という抽象を介して、作者の描く情感を私たちに大量に伝えようとする。それらは現実の空間以上に、その時代の文化や人々の心を映し出す場合がある。ここでは「万葉集」から「古今和歌集」「新古今和歌集」に至る和歌文学と、「枕草子」「源氏物語」という代表的王朝文学をとりあげ、そこに現れる空間、都市と建築を抽出することによって、その時代の人々の「心の中の空間」を探索する。
目次
「物語」にこそ―虚構の空間
『万葉集』の都市と建築
『古今和歌集』『新古今和歌集』の都市と建築
『枕草子』の都市と建築
『源氏物語』の都市と建築
躍動する文化構造
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れどれ
2
建築工学畑からの文学論という見慣れない試みだが、自身の本分からの視点に寄らず、あくまで文学の地平から眺めた都市論建築論となっており、目線がフラットで新鮮。文学の世界に描かれる”空間”は文章によって構築されただけの実体なきものであるけれども、著者はそれに実体を見出して、"空間"を再構築している。その作業が緻密で面白い。2022/10/17
katashin86
2
和歌の分析については首を傾げたくなるところが多いが、枕草子・源氏物語についての見方はなかなか面白い。タイトルを逆転させた、都市平安京のなかの文学、として読める。2018/02/21
まゆみ
1
空間の描写から垣間見える思想や時代背景2014/05/18