内容説明
水俣の魂は、世紀を越えて、決して滅びない。1967‐1999、大地と海の声を語り、水俣病を語って、この国の近代を問い続けた、精選された24編の記録。
目次
潮の呼ぶ声
秘跡は人のみない時にあらわれる
渚より
死者たちを背負って
魂が先乗りして
日月丸に魂たちを乗せて
日月丸始末
出魂儀
たとえひとりになっても
川本輝夫さんを悼む〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
勝浩1958
10
石牟礼女史の不知火海やそこで生きる人々への想いを語る、その言葉のなんと美しいことか。自然の育みと一つになって、生命あるものを慈しむ気持ちを抱きながらの日々の生活。もう私たちが失って取り返しのつかない、古の日本人の心情とでも言えばいいのでしょうか。もう一方で、水俣病に対しては「水俣病問題の矮小化をもたらしたのは、近代的理念の柱である法体系そのものであった。」は、訴訟を闘った実感がもたらしたものでしょう。厳しい言葉です。そして、日本はほんとうに誰も責任を取らない国だと思いました。2015/02/08
belier
3
再読。2000年に刊行のエッセイ集。前回は石牟礼が敬愛を込めて語る患者たちのことを知らないで読んだ。今回は70年代水俣病闘争の後日譚としても読めた。石牟礼は言う。「あの人たちが亡くなってしまったら、ほんとうにあのデリケートさが節度を保っていた、もっともよき日本の魂が、消滅してしまうかもしれぬ」チッソや国、あるいは進歩的な知識人については舌鋒鋭く批判する。懇意の患者については温かい友情を維持し、川本輝夫氏の死を悼み、杉本栄子氏や緒方正人氏らが苦しみを通して叡智を深めているのに感嘆し、はげまされている。2022/10/11
belier
3
水俣病患者に寄り添って生きた作家のエッセイや講演記録を収録。水俣病に苦しむ人たちは、身体は公害にやられていてもたましいは美しいままである。日本のよき伝統を引き継いでいるのは、国でも企業でもなく人権活動家ですらない、この人たちのほうだからだ。そうした人たちの代弁者として、作家は発言してきた。その言葉は怒りがこもった場合さえ気品がある。美しい日本語だ。2014/03/29
カネコ
0
◎2010/06/27