出版社内容情報
西欧思想との出会いをきっかけに,libertyやfreedomの訳語を通して日本に流布・定着したとされる「自由」という観念は,実はそれ以前の日本においても存在し独自の歴史のもと発展してきた。西洋思想との出会い以前と以降の日本における「自由・自在」という思想を,「古代・中世における日本での“自由”」「福沢諭吉,植木枝盛,中江兆民らによる自由の解読」「戦後と自由論の新展開―配給された自由の逆説」などの章を通して多角的に検討した書。
1.日本における「自由」の思想史-さまざまな接近と本講での視座
2.「自由」と「専擅」-「人主独擅」と「天皇事」の間
3.「自由」と「法」の内外-律令・武家法・太政官布告
4.「自由」と「不自由」-「仏法」と「王法のはざま」
5.「真実が汝等を自由になすべし」-キリシタン思想の挑戦
6.「自由」と「主宰」-近世儒教における「自由」の意味
7.「兵学」的「自由」と「万民自由」-徂徠学の課題
8.「自由便利」の両義性ー「都市」と「商業」
9.「権」と「自由」-経世策における近世から「維新」へ
10.「明治啓蒙」における「天賦自由」論の二類型-西洋的「自由」における
11.「天賦自由」から「民権自由」へ-自由民権における「自由」の急進化と狭隘化
12.「立法」と「道徳」-「功利主義」における「自由」の逆説
13.「文明」と「自由」-福沢諭吉における「自由」の分極
14.「心思ノ自由」と「烈士彪弗利」-中江兆民の思想
15.「専擅政府」と「自由政府」-兆民の到達