扶桑社ミステリー
生ける屍

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  • サイズ 文庫判/ページ数 274p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784594047566
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

31歳のQ・Pは、少年に対する猥褻行為で執行猶予判決を受け、いまは保護観察中だ。しかし、彼にはおそろしい考えがあった。気に入った少年を捕まえて、眼窩から脳へ針をとおし、ロボトミー手術を施すのだ。そうすれば、自我を失って彼の言うことをなんでも聞く、生ける屍―ゾンビを手に入れることができる!彼は、新たな標的へ近づく…ノーベル賞候補作家オーツが、ジェフリー・ダーマー事件を素材に、殺人者の内面をえぐる!ブラム・ストーカー賞を受賞した、サイコ・サスペンスの極北。

著者等紹介

オーツ,ジョイス・キャロル[オーツ,ジョイスキャロル][Oates,Joyce Carol]
1938年ニューヨーク州生まれ。別名義でのサスペンス小説も含め、多数の著作でアメリカ社会のダークな側面を描きつづけてきた。全米図書賞、O・ヘンリー賞をはじめ、数多くの文学賞に輝き、ノーベル文学賞の候補にもあげられた。連続殺人犯ジェフリー・ダーマーを素材にした『生ける屍』でブラム・ストーカー賞を受賞

井伊順彦[イイノブヒコ]
1955年東京生まれ。早稲田大学大学院博士前期課程修了。英文学者。トマス・ハーディ協会、ジョウゼフ・コンラッド協会、バーバラ・ピム協会(いずれも英国)各会員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

53
白人男性の日常が淡々と綴られている。大学の聴講生、寮の管理、祖母の手伝いといったほぼニートの日々。ただしその平凡な日常の記録と地続きに、理想の奴隷(ゾンビ)を作るべく人を攫って素人ロボトミー手術を繰り返す記述が表れる。それが日常と同じ地平にあり、特別な行為をしているわけではないという主人公の心象が何とも恐ろしい。基本失敗して捨てるの繰り返しだが、文章的には失敗した料理を捨てるような感じ。よって読み終えた時、何か空虚なものを覗き込んだ気分に襲われた。それにしても表紙、読み終えて改めて見ると実に怖いな。2014/06/02

ヘラジカ

19
ここまでバイオレンスな作品を読んだのは久しぶりだから、結構な耐性があるつもりなのに読書中何度も小さく呻いてしまった。とてもとても女性作家が書いた作品とは思えない。しかしこの題材で単なるサイコホラーに堕していないのは流石オーツといったところか。純粋な暴力と異常性愛を描くことで「悪とは何か」という問いにまで踏み込んでいるような奥深さを感じた。現代アメリカの闇を描いた秀作。コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国(No Country for Old Men)』と共に読むと色々と面白いかもしれない。2016/02/11

三柴ゆよし

18
三十男が誘拐した少年にロボトミー手術を施し、自分だけの奴隷(ゾンビ)製造を目論む話、とこう書いただけで正気を疑われそうな物語は、粘着質な語りとも相俟って、噂通りの気持ちわるさ。正直、本棚には並べたくないたぐいの本である。とはいえノーベル文学賞候補に毎年名前が挙がるオーツだから、小説のいたるところに、単なるスプラッタとは一線を画す細工が散りばめられている。この小説は人称の使用にすこし異質な面があり、語り手たる殺人者Q・P(クウェンティン)は一人称(おれ)と三人称(Q・P)を奇妙に混在させた叙述を行っている。2018/04/26

atomos

9
おれのゾンビ!かなり面白かった。もしおれがスウェーデン・アカデミーの会員だったら、オーツにノーベル文学賞100個あげるのに。〈眼窩貫通式ロボトミー〉といえば『ディスコ探偵水曜日』だし、文体とか挿画とかの感じが舞城っぽいなと思いながら読んでたら、訳者あとがきで『阿修羅ガール』が出てきてビックリした。オーツ作品は、これとあと『居心地の悪い部屋』収録の「やあ!やってるかい!」しか読んだことないので、他のも読んでみたい。多作の割にはあんまり翻訳出ていないようだけど。2014/03/16

すけきよ

7
淡々とロボトミーを繰り返し、失敗した死体は捨てるだけ。家族を殺すことにもおそらくなんのためらいも見せないはず。しかも、警察も、弁護士も、精神科医も簡単に騙されてしまう。決して、環境ではなく、単に狡猾な連続殺人鬼として生まれただけ、というのは本当に恐ろしい。環境がすべての要因とは思わないけど、それでも、なんの原因もないことを現実として認めるのは、なかなかしんどいよなぁ。2007/10/18

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