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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
26
東欧やソ連の本を次々に読む演習で学生が紹介してくれた本。元小学校長と称する老人が、政治に絡む秘密を知っているのではないかと秘密警察に疑われて拘留される。老人は、Aを説明するには〇年前のBのことを話さなくてはと、神話か妄想かというような話をえんえんと語って捜査官を煙に巻く。それらは作りごとのようでいて、実在の人物や出来事と無関係でもないらしく、当局も読者も「それはいいから本筋を!」といらいらさせられながら、老人の話にひき込まれていく。幻想的でありながら共産党体制下のルーマニアの空気も感じ取れる作品。2022/12/05
ミツ
24
とある男の失踪にまつわる老人の証言から始まる、終わりのない物語。飛び去ったまま落ちてこない矢、地下室の水底の向こうにある彼岸、美しき大女。嘘とも真実ともつかない語りの数々は決して収束することがないまま次の語りが始まり、霞のように物語は拡散し、真実は隠されたまま円環は閉じられる。幻想的で荒唐無稽な挿話を楽しむもよし、ひょいひょいと時間と空間を飛び越えて脱線し続ける文脈のなかで迷子になるもよし、はたまた真実とはなにかを探して探偵ごっこをするもよし。語りの魔術が持つ不穏な魅力にあふれた作品だった。2015/06/10
misui
15
官僚らを相手に語られる老人の話は、枠物語の形式を採りながらもエピソードからエピソードへと自在に脱線し、次第に迷路のような全体を形作っていく。次々に繰り出される不吉で底の知れない幻想に気持ちよく酩酊させられた。後半の展開で批評性がぐっと前に出てくるとはいえ、やはり枝葉の物語がどれも魅力的で、老人の話だけをずっと聞いていたかったとも思わせる。茶々が入らなければいくらでも続いたはずなんだよな。2012/06/01
キャラウェイ
2
おとぎに酔いしれよ。2021/12/22