出版社内容情報
福沢諭吉ら近代初期の思想家による西欧語受容過程を検討し,「意味以前のことば」として流通する翻訳語の特異性を理論化しつつ日本人にとって翻訳とは何かを問う。
内容説明
翻訳は日本語と日本文化に何をもたらしたか?―日本人の思考を支配する「翻訳日本語」への照射によって日本文化論に新たな視角を導入した著者が、近代初期の思想家・文学者による西欧語受容過程を具体的に検討し、「意味以前のことば」として流通する翻訳語特有の現象を“カセット効果”として理論化する。われわれにとって翻訳とはなにかを根底から問いなおすとともに、日本語の現状を捉える重要な手がかりを提示する。
目次
第1章 「カセット効果」の説
第2章 翻訳語「権」
第3章 翻訳語「自由」
第4章 societyの翻訳語
第5章 カセット文化論
第6章 翻訳語「彼」
著者等紹介
柳父章[ヤナブアキラ]
1928年東京生まれ。東京大学教養学科卒業。翻訳論・比較文化論専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ががが
2
外国の言葉が日本語に入ってくるときに、その言葉の意味はよく分からないが、なんとなくこういう意味なんじゃないかという憶測のもとで使用され続けることによって、その翻訳語の日本語における位置が定まるらしい。現代でも横文字が広告やキャッチコピーで使われて、イメージ先行で社会に侵入するという側面は確かにあるように思える。日本語での用例が乏しい翻訳語は、意味が定められないまま濫用されて普及する。代名詞の翻訳語のはずだった「彼」という言葉が濫用されて恋人の意味をもつようになったというのは説得力がある。2022/10/17
Star-Anis
0
自分の専門研究の端緒となってくれた記念すべき一冊。これ読んで以来、「翻訳語」の使い方・使われ方に神経質になってしまった。
澄川石狩掾
0
「カセット効果」を提唱した本。 翻訳語のような新しい言葉が、美しい宝石箱(カセット)のように、その中身ではなく外見の魅力によって使われるという説である。2022/07/07