内容説明
一九六八年に公開された映画『2001年宇宙の旅』とともに、世界は未来へと旅立った!以来、これほど多くの謎と喧噪と解釈に包まれたSF小説=映画はない。八〇・九〇年代の電脳文化勃興を経て、二〇〇一年の今、新しいパースペクティヴから衝撃の読解へ。アメリカ文学・文化研究の俊英が満を持して放つ、クラーク=キューブリック批評の決定版。HAL9000の夢、モノリスのヴィジョンとは何か。
目次
第1章 『2001年宇宙の旅』のフーガ
第2章 モノリスの陽のもとに―クラーク、ギブスン、アッシュボウ
第3章 未来戦争が、始まる―ウェルズ、エジソン、レーガン
第4章 日本SFのスター・ゲート―小松左京、田中光二、夢枕獏、大江健三郎
第5章 サイボーグ・キュービズム―エイリアン・アイの世紀
著者等紹介
巽孝之[タツミタカユキ]
1955年東京都生まれ。コーネル大学大学院博士課程修了(Ph.D.,1987)。現在、慶応義塾大学文学部教授。アメリカ文学専攻
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感想・レビュー
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おたま
36
映画『2001年宇宙の旅』は何度も観たけれど、未だに理解できない部分がある。クラークの小説版で、映画では象徴的に描かれていたところが丁寧に説明されていて、それはそれで分かる。がしかし、この映画は実は「理解できない部分」こそが大切なのだと思う。とはいえ、この本を読むと、2001年を迎えて(この本の出版が2001年)、それまでのSFの到達してきた点を下敷きに、この映画の、ニューウェーブやサイバーパンクとの共鳴や影響関係、さらに日本を含めてその後の文学や映画、社会に与えた影響を探っていて興味深い。2023/01/29
kochi
19
『2001年宇宙の旅』とモノリスを中心に据えたSF論。批評とは、こんなにも密度の高い文章を書かなければならないのか。豊富な知識と、レトリックが惜しげも無く注入されて、並の作家なら5冊ぐらい本を出しそうな(と、思ったら、五つのバラバラの論文を加筆改稿したものだった)。ついて行くには相当のSFその他の知識を要するだろうが、「量子論的に飛躍させた」とかの表現に「ソーカル事件」を思い出してしまった。SFへの愛に溢れた作品だが、大森望の意見も聞いて見たくなったf^_^;2014/06/13
岡本匠
12
そもそもこの映画をちゃんと映画館では観ていない。テレビで見ただけだと思う。アーサー・C・クラークの原作も読んでいない。しかし、なぜだかこの映画について書かれた本は読んでしまう。この本は、映画の初回上映時からどの様に受け入れられ、それが時代とともにどの様に変化していったか、さらには、それが他の作品に影響を与えてきたか。とてもエキサイティング。この人の作品も影響下にあったのか!読めば観たくなるし、2001年から3001年までのクラークの小説を読みたくなった。2018/05/06
くまこ
8
『2001年宇宙の旅』から始まり、知的好奇心の赴くまま、数々のSF作品に論及。宇宙空間で演奏されるモーツァルトのティヴェルティメントみたいなSFエッセイ。著者自身が知的遊戯という表現をしていて、それが本書を端的に言い表している。想像力の化学変化を楽しく促してくれる触媒のような一冊。2013/06/23
女神の巡礼者
3
1968年公開のスタンリー=キューブリック監督作品『2001年宇宙の旅』と、アーサー・C・クラーク氏の原作小説を、2001年にその成立過程や背景とともに、文明論として評論した一冊。それを22年後の今読んだわけですが、半世紀前にすでに電脳あるいはAIと人類の関係が深く考察されているのは驚きでした。といっても、私ごときの頭脳ではちょっと難解でしたけど。そしてクラーク氏の『2001・・・』から『3001・・・』および、小松左京氏の『継ぐのは誰か?』をはじめとする作品を再読したくなりました。2023/09/19