内容説明
カラオケする親子、ヒーリング系にひたるビジネス(ウー)マン、ウォークマンの若者、ゲーム音楽にノル子供、そしてBGM…。いまや公私の生活環境すべてに多様で膨大な音や音楽が充満している。これはどういう事態なのか?着メロは音楽か?旧弊の西欧近代芸術観から思いきり自由になって、私たちの音体験全体に問いかける新しいアプローチへ。もっと豊かな「音‐楽」ライフのためにいま、音楽文化論の冒険が始まる。
目次
音楽の輪郭/へり
音楽と「場」(メディアあるいは「いつでも‐どこでも」;「いま‐ここ」あるいはノイズ)
「作品」を疑う
誰から誰へ?―音楽の署名/宛先
音楽のプロ/アマ?
視覚的なものと音楽の密接な関係
身体と音楽
生命と音楽
音楽の倫理―消費を越えて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
39
いわゆる「音楽入門」からは遠く離れ、音楽はもとより音そのものと私たちとの関わりを考察していく。ここには十二音や微分音に到達して、その先の開発に行き詰まった西洋音楽、といったことさえも突き抜けて、環境にあふれる音楽、あるいは音楽もどきまでを論にのせていく。消えていく音についてのラストは、まさに捉えようとして捉えられないもどかしさを、論じるというより極力語っていこうとする意志の表明であるようだ。2018/02/03
ザフー
15
たとえば遠くに聴こえるたぬきばやしとケージの『4'33”』の間で、その依怙を揺さぶってみる。音楽という一語に「とは何か」と問う哲学の矛を収め、ソーダの泡のように立ち上げる問いの、平易な語り口で巡る「音楽文化論」。著者は仏文学出身、ミニマルミュージックや現代音楽関連の本を著してきた。エシックスとは倫理(エチカ)の複数形。単数形musicを複数形musicsに返す問い方自体が一番のミソなのかも。太鼓の様に二つのものが打つかることで音は鳴り、耳を澄ますことから全ては始まる。注が本/音盤ガイドを兼ねてるのもいい。2023/05/08
ステビア
13
テスト用。大嫌いなタイプの文章で書かれていて読むのが苦痛で仕方なかった。単位くれ。2015/01/18
my_you
4
音楽論の内容は、そこで言及されている音楽を聴いてみればわかる。ここではケージ、ライヒ、野村誠など、音とは何か、という問いを突き詰めてきた思索的音楽者たちが挙げられている。音とは何か? それが問いだ。輪郭、場所、ノイズ、作品とは?、署名、プロ/アマ、視覚性、身体性、生命、倫理、そういった観点から問いつづけてゆく。入門なので各論さほど深くは立ち入らないが、そこから深く考える足場はしっかりしている。引用文献が多く、各章ごとにリストが併載されているのもそのためだろう。2010/10/28
巽
2
考える端緒として興味深かった。話題は散漫で、全体としてのまとまりは乏しいが、音楽について音について、ぽろんぽろんと弾き語るような作品。最後の方はサンホラを聴きながら。2017/02/11