内容説明
“奉戴”という制度をはじめ、イデオロギー的支配の延命策と支配的イデオロギーの再生産のからくりを読み取る。昭和という時代の暗い意味と可能性を浮かび上がらせる果敢な試み。
目次
詩「雨の降る品川駅」とは何か―昭和三年の意味
“インターナショナリズム”は“饅頭問題”を越えられたか―日本プロレタリア文化運動のなかの朝鮮
“小林秀雄”というイデオロギー―「私小説論」前後
表象された国民―“翼賛”への道―昭和十二年の意味
堀辰雄の古代―“日本主義の文学化”の実相
“戦士”になった女たち
“奉戴”という再生産システムをめぐって―中野重治の敗戦直後
坂口安吾と戸坂潤―「堕落論」と「道徳論」のあいだ
“モラル”と呼ぶ新しい概念の創造―「白痴」と安吾の敗戦
逸脱する女の非労働―坂口安吾「青鬼の褌を洗ふ女」をめぐって
著者等紹介
林淑美[リンシュクミ]
1949年東京生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専攻、日本近代文学
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感想・レビュー
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URYY
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再読なんだけど、著者の本のなかでは、一番違和感なく読める。特に、「安吾の青鬼の褌を洗う女」論はよいと思う。ただ、〈資本論〉使いたくて、青鬼読んだんじゃないのかな、と思わせられるので、そこがしらけてしまう。2012/06/10
uehara
0
アルチュセールのイデオロギー論に戸坂潤のイデオロギー批判を接続し、文学の社会的機能を論じている。中野重治、小林秀雄、坂口安吾等々。主にアジア・太平洋戦争期イデオロギー装置の経過をしっかり振り返り、作品等との対応読み込むので、経過の長さに疲れる人はいるか。 抵抗文学ともされる作品の(戦後『花あしび』にまとめられるところの堀辰雄作品)、読者と共有するところの前提として引用せぬ引用=暗黙の引用を剔抉し、日本主義の文学化だという指摘になるほどと(「堀辰雄の古代」)2024/04/22