内容説明
漱石の仏教、とくに浄土教理解は年を追って次第に深まり、諸作品にも影を落とし、晩年の「則天去私」思想の形成にも影響をおよぼした。本書は、『漱石と落語』『漱石の京都』と同様に、漱石がわが国の伝統文化のなかから批判的に摂取したものを明らかにしていこうとする試みの一つである。平静な心と勇気とを求めて仏教と出会い、「則天去私」への道を歩んだ漱石の行動と内面の軌跡を、少しでも明らかにする。
目次
漱石と仏教ノート(作家以前の時代;作家時代;晩年)
漱石は二度参禅した?(参禅までの煩悶;鈴木大拙の証言;真剣味を欠く明治二十六年の参禅;公案に立ちすくんだ二度目の参禅)
参禅体験と「夢十夜」第二夜考(精神の危機―和尚への殺気;悟りを開けず、自刃もできず;釈宗演への敬意と反発;「色気」を去って、「実意」につく)
著者等紹介
水川隆夫[ミズカワタカオ]
1934年京都生まれ。京都大学文学部(国文学専攻)卒業。中学校・高校教諭、京都府教育研究所員を経て、京都女子大学文学部教授となり、1999年退官。現在は日本近代文学・国語教育などに関して幅広く執筆
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