内容説明
人間が加工してつくる道具やモノ、その形は、どうやって進化してきたのか―この問いに、要求される機能に沿って、と答えるのでは不十分。実用品の変化は、それが出来ることではなく、出来なかったこと、不具合や失敗の線を軸に歴史を刻んできた―デザインと技術の歴史に豊富な事例をもって新しい視点を据えつけ、“失敗”からのモノづくりを教える著者の代表作。
目次
フォークの歯はなぜ四本になったか
形は失敗にしたがう
批評家としての発明家
ピンからペーパークリップへ
瑣末なモノもあなどれない
ファスナーが生まれるまで
道具が道具を作る
増殖のパターン
流行とインダストリアル・デザイン
先行するモノの力
開けるより封じる
ちょっと変えて大儲け
良が最良よりも良いとき
つねに改良の余地がある
著者等紹介
ペトロスキー,ヘンリー[ペトロスキー,ヘンリー][Petroski,Henry]
アメリカの工学者。1942年生まれ。デューク大学教授を務める
忠平美幸[タダヒラミユキ]
神奈川県出身、早稲田大学第一文学部卒業。同大学図書館司書を経て、現在は翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
103
まあまあ。私たちがふだん使っているさまざまな人工物(フォークとかファスナーとかプルタブとか)がどのようなデザイン的な変遷を経て、今日のような形に落ち着いたのか、その事例を数多く紹介しつつ、著者の持論である「形は機能に従うのではなく、形は失敗に従う」を展開していく一冊。まあ言わんとすることはわからなくはないけれど、改良も含めて広い意味で「機能に従う」といってもいいのでは?と思わなくもない。どちらかというと、個別事例の豆知識的な内容がおもしろい。2022/04/22
Willie the Wildcat
59
進化論。興味深いのは、進化を齎したのが現実との不適合との件。必要性、実用性、科学的検証結果など、多岐に渡ると言える。もう1つのエッセンスは、人の持つ欲望。発明が”数字”と考えられる過程も、もれなく歴史の一端。取り上げられたテーマの中では「缶のフタ」が秀悦。雑学を超えた世界に惹き込まれた。(笑)自分の中で解が見えなかったのは、デザインvs.機能。この観点ではファスナーが良い題材。エンジニアリングの本質を追求という感。予想していたよりも読み応えあり。2018/01/21
吉野ヶ里
30
良い本です。言葉の選び方が非常に丁寧なので主張の筋を追いやすくて好感が持てます。著者 だけでなく訳者も良い仕事してる。実用品の進化論とのことですが、人間の文化全体に言及できるポテンシャルがあると思います。「形は失敗に従う」がメイン主張。失敗ってのは、あるものを使ったときに感じる不都合や不快感のことで、人によってなにが失敗かは異なる。同じような失敗を改善するのにも、人によって異なった方針があり、様々な選択によって形が決まる。よって、一つの、機能に従った形などはない。2016/07/18
ふろんた
25
工業デザインは機能の進化ではなく、失敗の積み重ねから出来上がっているというのが論旨。タイトルの件についてはなんとなく想像できたが、箸の起源は意外だった。2016/05/27
shikada
16
道具のデザインには、物語がある。本書は、フォークやクリップ、ファスナーといった日用品を例に出して、それらがどう発達してきたかを説明する。道具はつねに発展途上で、未完成だ。道具は常に改良の余地があり、道具の進化は、その不具合を解消することで発展してきた。現代の自分たちは、いまあるデザインを当たり前のものとして受け止めていて、過去に存在した歯が2本のフォークを見たら「なんて不便で、珍妙なデザインだ」と思うだろうけれど、きっと未来人が現代人の食器を見たら、同じことを思うんだろうな。2019/11/23