内容説明
ゴーギャンなどの画家、ジャリやアポリネールらの詩人、そしてシュルレアリストたちに見出された画家ルソー。死後ますます評価の高まるその幻視のリアルティは、彼の絵をみた者に忘れがたい強烈な印象を残す。美術史が位置づける素朴派という軛から解放し、世の無理解にあい不遇のうちに逝った天才の謎にみちた生涯と作品の秘密に迫る傑作評伝。
目次
故郷ラヴァル
メキシコの夢
パリ市入市税関
アンデパンダン展
アルフレッド・ジャリ
再婚
「蛇使い」まで
銀行詐欺事件
「詩人に霊感を授けるミューズ」
ピカソのアトリエで
熱帯の楽園
最後の恋
著者等紹介
岡谷公二[オカヤコウジ]
1929年生。東京大学文学部美学美術史学科卒業。跡見学園女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
144
まぁまぁおもしろかった。フランス美術のなかでも異色の画家アンリ・ルソーの生涯を資料などから読み解いていく一冊。たまに著者の主観が入るけれど、鬱陶しく感じるほどでもなく、分譲も平易で読みやすいので、わりと客観的にルソーという人物をなぞることができる。なんとなく想像はしていたけれど、思った以上に変人だった。もっとカラーの図版が多かったらなお良かったかも。2021/01/05
つくよみ
43
★★☆ 一見すると、幼稚で滑稽。でも何故か魅力的で、目が離せなくなる絵。終生、殆ど作品を認められることが無く、むしろ嘲笑され続ける中でも、己の才能を妄信し、描き続けたアンリ・ルソー(1844-1910)。権威に弱く、自己顕示欲が強く、騙されやすい、恋多き情熱家。周りを気にせず、自分の信じたいものだけを信じる、大きな子供。それが嵩じて、他人から聞いた話や自身の空想を、自分の体験談だと信じ込んでしまう・・・その作品以上に、個性的な個性の持ち主。そんなルソーの、素朴で人間くさい生涯を浮き彫りにした、傑作評伝。2013/12/11
ササミ
22
知れば知るほど謎の人。絵と恋愛に貪欲で、困窮を極め犯罪歴もあり、フリーメーソンの会員でもある。突っ込みどころ満載なんだけど、ここまで自由に生きられたらある意味幸せだったでしょう。先日『こども展』で観た、「人形を抱く子ども」は名だたる名画の中においても、異彩を放ちキラキラと輝いて見えました。不思議だけどなぜか惹きつけられるルソー作品。今後もチャンスがあれば作品を拝みたいものです。2014/07/17
Koichiro Minematsu
13
本著でアンリ・ルソーの一部を知ることができた。ますます興味をそそられるアーティストだ。これほど、自己評価と他者評価が対極しているのもルソーらしく感じる。貧困、女性好き、音楽家、前科者。2016/09/29
R子
8
極貧の中で絵を描き、酷評されても自分のスタイルを崩さなかったルソー。芯の強さを感じます。絵を描くモチベーションをどうやって保っていたのだろうかと考えながら読みました。騙されやすく、夢想家。そのくせ盗みや銀行詐欺事件に関与するなどその人物像は謎めいています。アカデミズムの画家を尊敬し影響を受けたそうですが、彼らの絵をヒントにルソーが描いた絵は風刺画と呼べそうなものだったというのも謎です。吃驚&面白エピソード満載で大変満足。傑作評伝です。おすすめ。2013/09/04